ストーリーズ・イン・シークレット

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58 告白

注意! 前半に怪我を描写する文章が有ります。
    苦手な方は最初の10行程をとばしてお読みください。
    ストーリーに差し支えは有りません。


 あたしは大丈夫だった。最近体のバランス崩すのが癖になっているのが幸いし、いつでも何かにつかまる習慣がついていて、体の脇には手すりが有ったから。でも背中越しに聞いたゴロゴロって鈍い音は振り返らなくっても
“人間だ”
って分かった。叩き付けられる音と砕ける音。それに微かに漏れたうめき声を耳にし、骨折したって直感した。見上げたジョージは踊り場で鹿子の下敷きになり、その左手は肩から奇妙な方向にねじれ、僅かに頭を振ったかと思うとその動きを止めた。
「嘘っ……。」
呆然としている鹿子は彼の上からどく事すらも出来ずにいて。
「駄目だよ。」
あたしは階段戻って彼女の体をやんわりとどかした。それからバックの中探って携帯を取り出す。稔と相談し、いつどこで何が有っても良い様に119の短縮が記録されていているから、ワンプッシュで救急隊につながる。
「渋谷区の宇田川2丁目。」
本能で自分の手帳に書いてあった通りの住所を読み終わり、
「どうされました?」
の声で初めてパニックに襲われそうになる。ジョージが死んだ? 嘘だよって。おそるおそる彼の首に手を当てると動脈はしっかりと波打っている。それは彼ののど仏みたいに大きく
「生きてます。生きてるから早く来て!」
そう言っていた。
「階段から落ちて、何だか凄い事になって、気を失ってるみたい。それに骨折しているし。」
バラバラと駆け寄って来る会場のスタッフと、
「どうした!」
って叫び声と
「あんたの所為で!」
飛びかかって来た鹿子がクロスする。あたしは鹿子を蹴飛ばして携帯を握りしめ、拳で一発くらわしてやろうかと身構えた。そこに男の子が飛び込んで来て彼女を止めた。
「放してよ!」
「今はそんな時じゃないでしょう!?」
彼の声は悲壮だった。
「ジョージが、ジョージさんが心配じゃないのかよ!?」
あとで聞いた話しだと彼の名前は
“卓ちゃん”
と言い、案の定ジョージの今彼だった。その卓ちゃんが彼女を羽交い締めにしあたしの方を
“助けてくれ”
って見つめた。
『すぐ行きます。なにもしないで待っていて下さい。』
の声を電話越しに聞いていたあたしはみんなに聞こえる様に
「今すぐ救急隊が来てくれるから!」
そう叫んだ。
「大丈夫だから! すぐに救急隊の人達来てくれるから! こんなんで駄目になるジョージじゃないし。大丈夫、大丈夫だから。」
あたしはこの時
“死なない”
の言葉さえ使えなかった。死ぬ事が怖かった。ジョージも、稔も。死んでは欲しくなかったから。

 救急隊の人達がやって来るまでの5分間は長い様で短かった。みんなはただうろうろするばかり。
『役立たず!』
そんな言葉を呑み込みながら       
「誰かジョージの足、持ち上げられる様なもの持って来て!」
あたしが周りに指図する。たまたまこの前産婦人科を受診した時、暇に任せて読んだ救急救命の記事がまさかこんな所で役に立つなんて思っても見なかったよ。
「血圧下げない様にしないと。」
なんて。それから
「誰かジョージの貴重品持って来て、中に保険証無いか確かめて。もしかかりつけの病院が有ったらそこの診察券もね。」
それは妊婦がいつでも持って歩くものだって所が少し笑えた。あたしは彼の大丈夫な方の手をしっかり握りしめ
「これから多分ジョージはしばらく帰って来れないよ。でも個展は開くんだよね?」
周りに聞いてみた。動揺の中で頷く仕草がいくつか有って。
「だったらきちんと成功させなさいよ。」
これってあたしが言う事じゃ無いんだろうけどね。
「こいつにはあたしがついていくから。こいつの事はあたしが責任持つから。その代わりこいつが帰って来た時困る事が無い様にしっかり見といたげなよ。」
すると
「馬鹿言わないでよ!」
鹿子が叫び再びギャァギャァと暴れ出した。
「あんたにかかったら、兄さん殺されちゃうよ!」
もうひっぱたいてやりたかった。生きる事とか死ぬ事とか。ましてや
“殺す”
なんて口に出しても欲しくない。
「いい加減にして。」
あたしは腹の底から声出した。
「状況分かんなさいよ。」
とその時
「痛てぇ……。」
ってあたしの手をつかんでジョージがむっくりと起き上がって来た。
「ちょっ、大丈夫なのあんた!?」
「いや、大丈夫じゃない。」
彼はへらへらと笑いながら再び床に頭を下ろした。みんな耳を澄ませて彼の言葉を待つ。すると
「俺、こいつと行くから。」
あたしが握っている手を僅かに振ってみせ
「みんなには悪いけど、いなくていいのはこいつだけだから。だからあと、よろしく。」
そう言った。

 気がついたら二人でぼんやりと救急の待ち合いにいた。結局頭に怪我は無くて脳震盪を起こしただけだったらしく、肩も脱臼しただけで折れてはいなかった。あたしの直感って当てにならない。あの時の印象よりも傷は軽くって、手術の必要も無いしこのまま帰っていいとさえ言われた。
「良かったね。」
夕焼けに染まった部屋の隅っこでそう言った。
「そうだな。」
彼は左手を三角巾で吊りながらさっきあたしが買って来たお茶を飲み干した。
「痛み止めの薬が効き始めたらタクシーでギャラリーまで送ってくからさ。それまでゆっくり行こう。卓ちゃんって子にジョージは無事だって連絡しといたから、焦る必要ないよ。」
「ああ。」
ジョージは大きなため息をついた。そのやつれた顔を見ながら
「あのさ、思うんだけど。」
ふと思いついた事を口にした。
「あたしって不幸を呼ぶのかな。」
って。
「何だかさ、あたしの周りの人間、みんな不幸になって行く気がする。稔も、あんたも。」
勝利も。紫乃ちゃんも。あたしの両親も稔の両親も。それから鹿子だってそうだ。
「みんなあたしが不幸にしているのかな。」
うなだれて足下を見た。大きなお腹に邪魔されてあたしの視界は狭い。その行き場の無い視線を
「違うよ。」
っていうジョージの声が引き戻した。
「お前、強いから。」
「はっ?」
痛いはずの彼はうっすらと笑った。
「お前の生き方は強いから。みんなお前の事見て羨ましいって思っちゃうんだよ。半分の人間はそんなお前を特別な人間だって思ってそれでお終いだけど、残りの半分は自分とのギャップに苦しむんだ。自分もそうなりたいって思うけどなれない自分を見せつけられるみたいで苦しいから。その悪あがきで自分から不幸に飛び込んでしまうんだよ。」
「何それ。」
言ってる意味分からなくって彼の事見た。
「俺がそうだから。」
ジョージはため息をついた。
「初めてお前と会った時、脅威を感じた。この女に稔の事とられるかもしれないって。」
それはジョージの
“告白”
だった。
「俺と初めて会った日の事、覚えているか?」
それって確かあたしが高校に入ったその年の学祭だった気がする。あたし達はバンド組んでパヒュームな踊りでエグザイル歌ったんだっけ。あの時機材貸してくれたのがこいつで、みんなで挨拶した記憶が有る。
「ああ、あんときね。あんた打ち上げのカラオケ屋で
“やぁ無情”
歌ったよね。めちゃ上手くって、プロになったらって言ったの覚えてるよ。」
それはずいぶん昔の記憶だったけど。
「あの時さ、稔がお前の事
“親友”
って言って肩抱いたんだよ。お前は笑っててさ、悔しかった。」
「それって……。」
稔がこいつに告白する前の事じゃ無い?
「そうだよ。」
ジョージは肩をすくめた。
「俺はナチュラルにこっちの人間で、密かにあいつに惚れれて、ずっと狙ってた。こういうのって勘が働くもんでさ、稔はこっちだって感じてたからずっと粉かけてあいつの気を引いてた。そこにお前が登場するだろ?ヤバいって思ったさ。このままあいつの事お前に盗られるのかって思うと悔しかった。」
「って、でもあたし、稔とは本当に友達だったじゃん? それにさ、あんたは知らないと思うけど、あんたに告白する様に稔に勧めたのあたしだし。」
「いや、知ってたさ。だから悔しいんだよ。分かってないなぁ。」
彼は無事だった手であたしの事をこずいた。
「そう言う人間だって言うお前が脅威だったんだよ。お前、単純すぎるから。正しいって信じた事、疑わないだろう?」
「そんな事……。」
あたしにだって揺るぎまくった過去はある。
「無いよ。」
ジョージは鼻の先でふふんって笑った。
「そう言う意味でお前普通じゃないから。動物で言えば
“雌豹”
見たいな? かなり格好よくって、でも牙も爪も鋭いから。だからみんなが勝手に振り回されてしまうんだよ。お前に。」
何だか彼が精一杯あたしの事をフォローしてくれようとしているみたいでおかしい。
「今更だけど俺、完全にお前に負けたなって思う。でもさ、それ以上になんで戦ってたんだろうって、病院来て検査受けてもしかしたらこのまま死ぬのかもって気持ちが何回も胸よぎって、それで馬鹿馬鹿しい事に気がついたさ。無駄だって。お前とやっても勝てないし、ましてや俺たちの人生、勝ち負けじゃないって。」
それからあたしの手をいきなり握ったかと思うと
「稔を頼む。」
彼はそっと頭を下げた。
「この通り。」
「馬鹿言わないで。」
あたしは首を大きく振っていた。
「何大げさに頼んでんのよ。何一人で逃げ出そうとしてんのよ。ふざけないでよね。あんたあたしがさっき言った事、忘れちゃったの? やっぱ頭の打ち所悪かったんじゃない? ここで大変だからって稔との縁を切っちゃうの? マジ根性無しじゃん、そんなの。」
思わず叱咤してしまったあたしに
「あははははっ。」
彼は僅かな声を立て作り笑いをした。
「そう言えばお前、昔っから女じゃなかったな。見た目女だけど、中身は男だもんな。」
「悪かったわね。」
肩をすくめたあたしに
「お前が本当の男だったら、この俺でも惚れてたかもな。」
ジョージはにっと笑ってみせた。
「冗談じゃない。」
あたしは憎まれ口を叩いた。
「せいぜい友達止まりだよ。」


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                 あとがき


     
                    

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Date:2009/05/08
Trackback:0
Comment:2
Thema:自作連載小説
Janre:小説・文学

Comment

* 人として・・

ジョージと涼子の関係が良くなって
安心だね。稔も嬉しいだろうにね。
次の展開がほんと、楽しみです!
2009/05/11 【tomo】 URL #- [編集]

* >tomo ちゃんへ

何となく稔の“幸せ”見えて来た気がしますでしょう?
どんな形でも、やっぱ幸せってのが良いですよね♡
2009/05/11 【廣瀬 】 URL #- [編集]

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