ストーリーズ・イン・シークレット

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25 新しい男

 もう決心したつもりだった。忘れるって。勝利が出張で傍に居ない今の内に他の男作っちゃおうって。
 だからすぐに次の男を捜さないとって思った。本当は今更男なんて要らなかったけど。勝利の前は男日照りが2年開いても全然平気だった。でもね。それじゃぁ絶対に忘れられない事分かってたから。恋するまでは出来なくても、せめて本当のヤリ友が必要なのかもって思えた。
 手っ取り早く、以前コンパで一緒になって偶然会社の前で再会した取引先の男を選んでみたりした。その時の印象はまずまずだったから。もっとも女同士の中では一番人気のモテモテ君だったけど、その時のあたしにはなんかもの足りない気がしたってのが本音。でもコンパの夜に、あわよくばトゥ・ゴーできたはずの彼が手ぶらで帰ったのはポイント高かった。程よく手入れのされた髪型に糊の利いたワイシャツ。彼の時計は皮のラドウ。今までの経験上ロレックスとホイヤーは外しが多いから悪くない。ムーブメントを内側にしている男も私の中では点が高かった。女っぽいかもしれないけれど、一緒にいる相手に時間を見ている事を悟られない様にする気配りが出来るって事じゃん。
「あれから連絡くれないけど、やっぱ名刺捨てちゃった?」
笑い顔で話しかけられ
「ご免ね~、無くしたの。」
なんて言いながら
「良かったらメルアド。」
そう言って携帯を取り出した。簡単だった。
 待ち合わせはシティホテルのロビー。幸先はまずまず。連れて行かれたのは料亭造りのこぎれいな蕎麦屋で、馴染みの店らしくマスターが彼に挨拶をして来た。
「古池さんもお連れ様もゆっくりしていって下さいね。」
って。
「この前和食が好きだって言ってたよね。」
テーブル越しに体を乗り出した彼に小声で囁かれ、覚えていてくれた事に気分を良くした。ついでに料理はかなり美味しかったから、もしかしたらこの人とは気が合うかもって思えて
「最近、彼と別れたばっかりで。何だか寂しくて、駄目ですね~。」
なんてお酒に酔って言ってみる。それからいかにもな仕草でちょっとだけ
“隙”
をアピールした。次に行ったのはお店出て少し歩いた所にある、1つ路地を曲がったキャッシュオンデリバリーのスタンディンングバー。静かなジャズと街灯のランプ。勝利じゃ絶対出来ないセレクト。
「奢らせてね。」
って彼が持って来たのはマティーニと
「それ、何?」
チョコレートの香りのカルーアミルク?
「プリンセス・リョウコ。」
「は?」
何言われてるのか分からなくって一瞬地が出ちゃったよ。そんなあたしを彼はくすくす笑いながら
「嘘。プリンセス・メアリー。」
ってカクテルの説明をしてくれた。それは生クリームとジンとカカオで作った口当たりの良いお酒なんだって。
「お好きな方をどうぞ。」
そう勧められ、天の邪鬼だな~って思いながらマティーニを手に取る。
「乾杯。」
一口含んで、
「あっ。」
これって・・・・。
「少し薄かった?」
背の高い丸テーブルに肘をつき、彼は首をかしげながら微笑んだ。
「まだ僕の事警戒してるでしょう?」
さすがにぎくっとした。でも
「そこが好きだって言ったら笑うかな?」
には参った。
 たった1杯のカクテルなのに二人ともぐっと打ち解けて、店を出る頃には何だかしっとりとした感じにちゃって。
「まだお互い十分知り合っているっては思えないけど。」
そう言いながらほんの少しの暗がりを引き寄せられ、ミルクの匂いのするキスを受けた。
「良い香りでしょう?」
頷くあたしに
「これ、狙ってたから。」
彼は絶対嘘だってばればれの感じで笑ったかと思うと、急に低い声で囁いた。
「今晩、一緒に過ごさない?」
あたしは握られた手を振り払う事が出来なかった。
 タクシーの行き先はそこそこ新しいマンションで
「初めてで自分ち連れて来るかなぁ。」
思わず苦笑いしていた。これは何となく行き過ぎな気がしたから。
「だって俺、意外と真剣だし。」
エレベーターを呼ぶ彼の顔はそれなりに結構マジに見えた。
「中川さんさ、気づいてなかったと思うけど、あの時のコンパ、俺中川さん狙いで組んでもらってたんだ。それにさ、打ち明けるけど、中川さんの会社出入りしながらいつか偶然のフリして声かけるの狙ってた。」
そのくせドアノブに鍵を差し込む直前であたしの方を振り返えり、
「俺、もしかしたら本気になっちゃうかもしれないけど、良い?今までは善い人ぶってたけど、実のとこ違うから。中川さんの事凄く興味有って、うわさ話とか耳にしてるし。悪いって思ったけど、中川さんのゴシップ、詳しい。でもさ、やっぱり諦めきれなくて。もうこうなったらアピール有るのみって、思ってるんですけど。」
単刀直入な彼の言葉を羨ましく聞いていた。あたしも勝利も、こんな会話無かったから。正直心動いた。だからなのかな。
「ゴメン。」
土壇場であたしはきびすを返していた。
「今まだ、本気になれない。そう言う付き合いは出来ない。」
「じゃぁ、本気じゃなきゃいいって?」
彼の取りすがる腕にあたしは渋々頷いた。
「今は、ね、隙間埋めてくれる人が欲しいだけだから。」
「じゃぁ今だけ、隙間埋めさせて。」
彼に引き寄せられ微かにサンダルウッドの香りを嗅いだ。
「避妊はさ、ちゃんとするし。安心して。でもって、本当に安心できそうだったら、俺のとこ来れば良いじゃない?」
 男が違うと唇も違う。掌の感触や体臭も。何もかもが違う。その事を思い出していた。
 何の変哲も無いベッドの上。彼のお気に入りだという小さなプラネタリュウムが天井に星空を作っり、BGM には海の音。
「俺、こう見えて結構ロマンティストだから。」
ベッドサイドにはワインクーラーに入って冷やされたボトルドウォーター。
「脱がしたい。」
その指で薄皮を剥がされる様に脱がされた。
「美人だけど肌もすべすべだね。」
「夢見てるようだよ。」
「あっ、こんな所に黒子発見。」
なんだかな~、だった。あたしは笑いながら
「しゃべり過ぎ。」
彼の唇を押さえた。
「だよね。ほら、さ。俺、涼子さん相手に興奮してるから。どうしてもテンション上がっちゃうんだよね。」
どこまでもおしゃべりだった。ここには勝利としている時に感じる緊迫感がまるで無く、気持ちが解放されてる様だった。
「今度はあたしが脱がしてあげよっか?」
あたしは男だったら誰でも好きな
“雌豹のポーズ”
で躯しならせた。
「うわっ。」
なんて言って古池がにやついた。30に一歩手前のはずなのに、八重歯が光ってて降ろしている前髪が少し子供っぽい。あたしはこういう
“ちょっと少年”
系がタイプなのかもって少し思った。
 濡れながら、彼はずっと囁いてた。
「相手にしてもらえるなんて思ってなかった。」
「俺、見た目通りに普通だけど、気持ちだけには自信有るから。」
「大事にするから、長くつき合ってよ。」
それから、彼の中指があたしに中に差し込まれ手前の所でクチュクチュと音をたてる。
「聞こえる?」
耳元で囁かれ
「涼子さん、いやらしい。」
って笑う。
「こんなに濡れてる。良い女だって思ってたけど、奥まで完璧。まだ指一本なのにこんなにぐちゅぐちゅ。」
そこから長い指先を奥へと進めた。彼の小指が後ろの方をとんとんって刺激するから、嫌でもアソコ締めちゃって。
「めちゃくちゃキツいね。まさか処女?」
なんて。この男、めちゃくちゃ上手いよって思った。どうすれば女が締まるか分かるって知ってるって。
「すけべなのはどっち?」
乳首に吸い付かれきゅんきゅん言い始めたアソコを彼に押し付けた。間違いなくあたしの躯は感じてた。何よりもあたしはその事を喜んだ。なんだぁ、勝利じゃなくったって濡れるんじゃんって。
「早く付けて。」
蕩けた躯で彼を求める。くすくす笑いながら彼はあたしに見える角度でゴムをつけた。
「お待たせ。」
彼との夜は確実に快楽を運んでくれる。探る様な腰つきに
「そこ、いいっ。」
って嬌声でサインを出せば
「ここね。」
って責められて。躯だけは満足だった。
「爪立てていいから。」
そう言われそれしてみようとするけど自然に指先が丸くなるから。これはもう習慣だって思った。勝利に刻まれたあたしの癖。でもそんな悲しい事は吹き飛ばすみたいにちりっ、ちりって目の前を火花が散り出して、
「かっ。」
って名前が出そうになる。何となく古池が気づいた感じでスピードを上げる。
「涼子さん、僕の事、見て、」
って。あたしは薄目で馴染みの無い男の顔を見つめた。切れ長の瞳に、ほんの少し鷲鼻。この人誰って。彼の目はあたしをあたしだって認識していた。でもね。あたしは古池の向こうに勝利を見ていた。無口で、辛抱強くって、あたしの事大事にしてくれて。見知らぬ男にしがみつきながら結局心の底では勝利の名前を呼んでいた。こうしてて、感じてて、何かが足りなくて。その最後のワンピースを叫んでた。

 明け方のベッド。喉が渇いておき上がりベッドサイドのぬるくなった水を飲んだ。その枕元には男性用のパジャマが2組おいてあり。
「マジ本気かも、この人。」
そう呟いていた。素肌に羽織る柔らかな男性用のパジャマは何だかエロティック。あたしは胸元につけて来た指輪のペンダントヘッドを少し悪かったかなって思いながらいじった。
 次に目が覚めた時、あたしの隣りには誰もいなかった。日差しがさんさんと差し込む部屋でしばらくぼーっとしているとどこからともなくコーヒーの良い香りがして来て
「お早う、涼子さん。」
Tシャツにイージーパンツの古池がトレイにカップとオレンジジュースとクロワッサンで現れた。
「好みが分からなかったからコーヒーと紅茶、両方入れたよ。」
って。その上
「食べれるんだったら卵も焼くよ。」
その尽くしっぷりに
「甘やかしてくれるじゃない?」
夜の後悔を振り払いたくて笑いながらトレイを受けとった。
「何しろお姫様ですから。ね、涼子姫。」
それはあたしの高校の頃のあだ名だった。この歳になって呼ばれるとさすがに生意気すぎて恥ずかしい。それでもあたしは
『涼子で良いよ。』
って言い出す気にはならなかった。


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Date:2009/02/21
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Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

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