ストーリーズ・イン・シークレット

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21 ファースト・デート

 初めての朝の別れ際、うつむいた顔で
「この次はいつ会える?」
そう言われ、勝利も堅そうに見えて普通に男なんだなぁって思ったけど、何となく嬉しくて
「都合が合えばね。」
まだ人のまばらな渋谷の通りを立ち止まった。
「メールくれる?」
彼はあたしを幸せにしてくれるから。彼女の影に怯える予感も有ったけど、それを手もとにある携帯の赤外線で遮ぎり
「これでアドレス、入ったでしょう?」
ほんの数秒であたし達はつながった。
 この時のあたしは彼があたしの名前をなんて登録したかなんか興味なかったはずだった。

 あれから1年以上経ったなんて。あの夜の事をぼんやりと思い出しながらこの週末は退屈な週末になりそうだって思った。勝利とこうなる前は、
“独りって気楽でサイコー”
って思ってたはずなのに、2週間に一回の予定が狂うのがこんなに寂しいなんて馬鹿みたい。
 土曜の夜に予定していた外資相手のコンパは何となく乗り気じゃなくて水曜日時点で
「今回生理痛きついから。」
って嘘ついてキャンセルしていた。 
『ははぁ、M 絡みと見た。』
典子にからかわれふてくされた。確かに生理中だったけどすでに5日目。それにあたしは痛くなったらすぐクスリ飲んじゃうからどうって事ないって彼女は知っている。
『涼子って、Mの事からかうの好きだよね~。なに、また週末おいたする訳?』
あいつが出張って話しはさすがに届いていないらしい。
「あんたには関係ないでしょう。」
ってやり返したけど、彼女はからからと笑って
『涼子には遊びでもMは本気かもよ~。気ぃつけやぁ。』
なんて勝手に電話を切られた。
 ぼんやり家で過ごす金曜の夜の10時。今週は残業も無くスムーズで、話題の映画で見たいのも有ったけど、人ごみをかき分ける気力も無かったから直帰。退屈。そのはずが
『明日、時間ある?』
そのメールで目が覚めたみたいだった。
「時間があったら何だって言うのよ。」
あたしはためらいながら返信を打った。どうせあんたは出張でしょう?
『有るけど。』
その意味を勝利はどんな風に受け取ったんだろう。しばらくしてから着信音。
『明後日のフライト、朝便で早いから成田にホテルとることにした。』
その続きは無くて戸惑った。彼はあたしを誘っているのか、それともからかってんのか。分かんない。散々悩んだ挙げ句
『どうすればいい?』
なんて打ち返し。
『部屋予約する。』
メールがすぐに届いた。でもそれには続きが有り。
『チェックインは12時だけど。』
「これって・・・・」
思わずベッドから降りて部屋の中をぐるぐると回っちゃった。何だか真面目にデートみたいじゃない?でも、彼が夜も一緒に過ごそうって誘いかけてるのか、それとも暇つぶしに呼んだだけなのかどっちでもとれる訳で。あたしはまるで初恋に浮かれる中学生の気分だった。
『部屋はどんな部屋?』
素直に
“ダブルなの?誘ってる?一晩一緒に過ごせるの?”
って聞けばいいものをね。
『少しいい部屋が取れそう。』
って返信が来て、いよいよ困ってしまう。チェックインは本当に12時?じゃぁ、する事したらあたしは帰れって事?もしお泊まりだったら心の準備ってのが有るし。せっかくだからいつもの痴漢対策って感じの通勤着じゃ嫌だし、髪型だって気になる。なんて思って、でもなんて言って確認しようかって迷っていると
『泊まれない?』
って届いてかなりほっとした。でも、こんな事で振り回されちゃった事が悔しくて
『時間調整する。多分、大丈夫。』
なんて打ってみた。そのくせ
「あたしって、素直じゃないなぁ。」
頭の中は明日着る服と持って行く服。それから下着の事でいっぱいになってしまってて
「用意しなきゃ!」
慌ててクローゼットを開けたりした。取り出したトランクに、そうだ、靴も選ばないとって気がついて。いそいそと靴箱あさってる時に届いたメールは
『ホテルとれた。待ち合わせは成田のJR の改札でいいかな?時間は涼子が決めて。』
ちょっと迷ったけどもういいやって、速効返信返した。
『11時。改札ね。』
だってさ、せっかくのデートだよ。さすがに成田だったら会社の誰かに会うとも思えないし。さっき打ったメールとは全然違うじゃんって感じの時間指定しながら、あたしは浮き足立っていた。 
 その夜は大事な糠床かき混ぜてからばっちりネイルケアして、それからSK のシートパックしてから寝たけれど、こんなんじゃ明日の朝起きれないかもってぐらい、寝付きは悪かった。

 人には絶対に似合う服と、絶対に似合わない服が有る。でもってそれが自分の好みと合っているかっていうとまるで違っていたりする。散々迷った挙げ句あたしが選んだ服は夏らしくってひらひらしたレースのワンピース。それにつば広の帽子。靴は無難にミュールって感じ。髪はルーズに三つ編みで。でも若く見え過ぎない様にポイントをつけた。だからいつもの
“雌豹”
路線とは少し違う。
 子供の頃は赤毛のアンが好きだった。今でも憧れるのはどちらかっていうとそっちの方で、ピンクハウスは絶対無理目でも微妙に可愛らしい服を着たくなる時があって。この日選んだ服もそんな感じ。ワンピースって言っても少し丈は短いからなんとかオッケーだろう、なんて事を考えながら結局約束の時間よりも15分も早く着いてしまった。このまま待とうか、それとも開いてる喫茶店にでも入ろうかな、なんて迷っている間に時間が過ぎて。時間丁度に現れた彼はジーンズにクリームイエローのポロシャツ。凄く普通なんだけどそれが格好良くって不思議。
「遅い。」
何だかドキドキしてるのが恥ずかしくって思わず文句を言ってしまい
「待たせた?ゴメン。」
謝られてしまったって思う。でも彼の目元は優しく笑っているから
「そうだよ、待ったよ。あんたが誘ったんだから勝利は時間より早く来るのが当たり前でしょう?」
憎まれ口を叩きながら、そんなあたしに怒っていない事を確認して安心した。
 
 彼が予約していたのは空港からほど近い誰でも知ってる航空系のホテルだった。真っ青に晴れた空に、さすが成田。都心には無いさらっとした風が吹いていて、思いのほか涼しくあたしはかなり気分が良かった。絶好のデート日和。
「良いとこじゃん。」
って成田を往復する送迎のバスから降りてエントランス抜けながら彼の事を肘で突ついた。こんな何にも無い場所で、もちろんイベントなんか期待できないって分かってた。勝利はサプライズ準備するタイプの男でもないし。どうやって過ごすのかな~、やっぱ部屋におこもりかな~なんて考えながら、こうやって明るい日差しの下を歩いているのが嬉しかった。高いロビーの天井から降り注ぐ光が鏡に反射してるみたいにキラキラしていた。だから
「ねぇねぇ。」
二人の荷物はポーターが運んでくれる。あたし達は手ぶら。
「ねぇねぇ。」
見下ろす勝利の左手に右手を滑らせた。二人の腕の内側の一番柔らかい所がすり合い、彼の掌がしっとり汗ばんでいるのが妙に心地いい。
「ねぇ。」
それは凄い満足感。触れ合ってる事がこんなに良い事だっていままでの男で思った事無かったよ。そんなときめきが、本当に
“デート”
って感じでくすぐったい。そんなあたしに彼は何か言いかけてやめ、絡めた指先に
“ぎゅっ”
って力を込めてくれたから。あ~あたしの気持ちに気がついてくれたって、手を握り返してくれたって、何だかとっても良い事が有りそうな気分で笑ってた。

 時間より早かったけど荷物を預けるからってフロントに行った。もちろん手続きは彼がするからその間少し暇になったあたしはホテルの案内板を眺めていた。丁度その時、どこかで鐘の音。しかも正に
“鐘の音”
って感じ。つまり、結婚式のあれ。あたしだって本物の音と偽物の音ぐらい分かるから。
「本物の結婚式、してるんだ。」
確かに今日は土曜日で、日も良いって言えば確かにそうだ。案内のプラスチックの板に
“教会”
の文字を見た。それからパンフレット。あたしはそれを手に取った。今まで本気でつき合った男で結婚したいって男がいなかった所為なのか、あたしは真面目に結婚式のパンフレットを見た事無かった。友達の何人かは
『超面白い』
なんてって彼氏もいないのにゼクスゥィとかいうブライダル雑誌読みあさって
“理想の結婚式”
プランたててたけど、
「これかぁ。」
って気分だった。
 あたしがそれを食い入る様に見ていると、カウンターの勝利が
「ちょっと。」
って呼んだ。
「なぁに。」
指差されたのは宿泊プランの説明が印刷されたチラシ。
「こちらのプランですと、ウエディングドレスの試着撮影が無料でつきますけれどいかが致しましょう。」
舞い上がっていたあたしは
「する。」
なんて思わず言っていた。
「髪型はオプションになりますので、そちらは御試着後ご相談となりまが、ご了承頂けますか。」
いい?あたしは反射的に彼の顔を覗き込んでいた。苦笑いの彼が
「お願いします。」
って、申込書にあたしの名前を書き込んでくれた。
「仲がおよろしいんですね。」
目の前のスタッフが笑うから少し照れたけど、こんなに気分のいいデートは初めて。係の人があたし達に背を向けてコンピューターの方へ行った時
「ねぇねぇ、勝利。」
あたしは勢いで言っていた。
「べったべたな恋人ごっこ、しよう。」
だって今日は快晴で。
「一日だけで良いからさ。」
それに風が吹き抜けて気持ち良い。
「絶対楽しいって。」
チャペルからは鐘の音。
「ちょっと、喜びなさいよ。」
少しびっくりした様な彼の肩を叩き
「こんな美人と恋人ごっこできるなんて、滅多に無いんだからね。」
しがみついた手を振り払われる事は無くって、それよりも
「良いよ。」
って頷いてもらえたのが嬉しかった。気分は上々。バラ色の人生ってこんな感じだよ、きっと。




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Date:2009/02/27
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Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

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