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ストーリーズ・イン・シークレット

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10 カンバセーション

「飲み物は?」
彼の声でふと我に返った。
意識飛ばすまではいかないまでも、ちょっとだけイッてたらしい。
いつの間にか処理も済ませた勝利が何事も無かった様な声で聞いて来た。
「ありがとう。欲しい。」
彼のオイルで光る肌の上を汗が沢山伝い落ちるのを感じていた。これじゃ、喉乾くよねって思った。気がついたらあたし自身、喉からからじゃん。
 彼は持ち込みオッケーな冷蔵庫を開け、ピーチ味の缶酎ハイを取り出した。あたしは少し慌ててシーツの下に潜り込む。安っぽくてペラペラで、でも妙に糊の利いた清潔なシーツ。
「サンキュー。」
胸元を隠しながらコップを受け取った。あたしはナチュラリストじゃないから、してない最中にまっぱ曝すのは気が引ける。
 そして肝心の彼はあたしの目なんか全く気にしない、むしろ仁王立ちで500のロング缶のプルタブを開けた。彼の目は酎ハイすするあたしを見ている。そののど仏がごくごくと動く音だけが狭い部屋に響いていた。
 一息ついた彼があたしの横に潜り込む。
「んっ。」
少しスペースを空け、ぬくもりを待つ。ちょっと丸くなり、左手で抱きかかえられて良い気分。何となく、お姫様だ。
 こんな時にあたしの髪を撫でるのが彼の癖だ。もともと猫っ毛で貧相なあたしの髪。ストパをかけた時には超貧乏臭い日本人形みたいで泣けて来た。そんなコンプレックスがあるから人一倍お手入れには気を使っている。勝利とこんな関係になった最初の頃、どうしてそんなに髪をいじるのが好きなのかと聞かれた事がある。
『好きな人に綺麗だねって撫でてもらうのが夢だもん。』
って答えた事、彼は覚えてるんだろうか。今彼がしてくれてるみたいにいかにも無意識にしちゃってますって感じで可愛がってもらうののが理想だ、なんて。今のあたしが猫だったら間違いなく喉鳴らしていると思う。それだけ気持ち良くって、優しくされているって感じだ。でも、当たり前だけど、彼から言葉はもらえない。
 でも、いいや。最初からそう言う事に期待持てないって分かってて始めた関係だ。あたしは頭を切り替えた。
「もしかして今度ヨーロッパ出張行く人?」
社内の噂で販売の拡大路線にヨーロッパが入っていて、営業担当が回るって話し聞いてたから。それに彼は確か大学でイタリア語を専攻していたって聞いた事があって。何となく、勘ってヤツだ。
「よく知ってるな。」
彼が目を丸くした。
「うふふ。」
これでも女だから。
「で、いく訳?」
「あっああ。」
彼は乗り気じゃないみたいだ。あたしだったら喜んでいくな、ヨーロッパ。
「代わりに行ったげようか?」
あたしは何だかその気になりそうだった。
「馬鹿。」
彼が笑った。
「行くったって、イタリアの地方都市だぜ。それに俺
 『みっきあーもよーだ』
ぐらいしかしゃべれないんだし。」
何を言っているのか分からず首を傾げるあたしに
「『私は余田です。』って、言ったんだよ。」
って彼は顔を赤くした。
「あの頃真面目に勉強してなくてさ、今更だけどヤバいかも。」
何だかその口調にシビアなもの感じちゃった。
「じゃ何、いつ行くの?」
「2週間後。」
「何日?」
「5日の予定かな。」
彼はため息をついた。
「それまで駆け込みでイタリア語やんなきゃいけないよ。英語だってひどいものなのに。」
ああ、そうか。本当はあたしとこうしている暇なんか無いのか、なんて少し悲しくなる。それでも彼は義理堅いから2週間に1度のペースを守ってる、そんな所なんだろう。
「そっかぁ。」
あたしは彼の胸に手を回した。
「それまでしばらくお預けかぁ。」
って。本当は
『頑張って来てね。』
とか
『勝利だったら出来るよ。』
とか
『寂しいから早く帰って来てね。』
なんて言いたいけど、あたしじゃ無理だから。その代わり、責任とって無駄にした時間を彼に返してあげる。楽しませてあげて。
 あたしは足をそっと彼のそれに絡ませる。おやって顔であたしに向けた顔、首筋にキスをして。
「もう一回、して。」
って甘えた声で囁く。彼の唇が開きかけて閉じる。
 いつも少ない会話。彼はあたしが話しかけないと何にも話してくれない。それが寂しい。そんな思いをするぐらいだったらいっその事、最初の目的を達成するに限る、じゃない?ノンバーバルコミュニケーションってヤツね。あたし達は躯で会話する。
 両手絡めて彼を引き寄せ、キス。彼の唇からはビールの匂い。
「はあっ。」
あたしは彼に息を吹きかけた。
「ピーチの匂い、する?」
 頭の片隅で、今の時間がとても遅くって明日のお肌はお疲れかちゃんだよって声が聞こえてて、あたしはそれにシートパックを約束していた。だから今だけは楽しませてねって。



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Date:2009/03/10
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Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

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