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ストーリーズ・イン・シークレット

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エイプリルフールの悪夢 R15 5

5 四月二日

 コンタクトはやめて黒ぶち眼鏡。ついでにマスクして。言い訳は
『花粉症になっちゃった』
長かった髪もざっくりと切って
『失恋したんです』
それからマニキュアも落とし爪も短くした。通勤着はリクルート入った黒のパンツ。鞄もトートに切り替えて。
「完璧」
結衣は鏡に向かって言い聞かせ
「怖くなんか無いもんね。ばったり会ったって気がつくもんか。今日から私はリニューアル!」
自分がどれほど馬鹿っぽい事をしているか百も承知で気合いを入れた。幸か不幸か、
“結婚するかも!?”
なんて思い詰めていたはずの男の顔はぱったりと忘れ、思い浮かぶのは大樹の事ばかりだ。
 彼は昨日アレからすぐに
「また会えるよね」
って携帯を出した。
「メルアド、送ってよ」
それからだめ押しで
「俺、明日からあのビルに中にある会社にご出勤だから」
と彼女の会社の名前を口にした。
「ははははは、そっかぁ。また会うかもね。確かに私の会社と同じビルだわ」
何とか誤摩化そうとする彼女は、大樹の目がちゃっかり彼女が持っている会社のネーム入り書簡をおさえているなんて気がつきやしない。ランチをモノの10分で終わらせ、携帯を出すフリで千円札を置き去りにし
「また連絡するね~」
と手を振りダッシュで逃げ切ったつもりだったのだ。
 残された彼は少し手強そうだと思いながら、それでも顔には満面の笑みをたたえていた。なにしろこの7年間、謝れるものならば謝りたいとずっと願っていた。もし彼女が忘れてしまっていたとしても、彼の心がそれを許さずにいた。でも彼女の態度から、結衣だってかなり相当良くあの時の事を覚えてるって事は想像がついたから。
「希望は有りと見た」
彼は独り言を漏らし、明日からの新しい生活に希望を膨らませた。

 一方、イメチェンコンプリートな結衣が早朝の会社に着いてすぐ、詩音は彼女を見つけ
「200点見つけたよ!」
開口一番そう言った。目の前で変装かましている彼女に
『あれ~どうしたの? 眼鏡なんかしちゃって。その上マスク? 髪型まで変えちゃって~』
とかじゃない。
「200点! 200点! 200点!」
なのである。
「何それ」
身構えていた結衣は不信そうに聞いた。絶対自分の変わった姿を褒めてくれているんじゃないって確信は有ったから。
「だから200点だって!」
詩音は興奮気味に繰り返えす。
「医学部の新卒で、イケメン。身長175以上。石けんは私と同じ牛乳石けんさっぱりタイプ。ちょっとマッチだけど、ミサンガは無し」
彼女のこだわりは微妙だ。
「指輪はもちろん、カレッジリングもしてないし。ついでにスーツは吊るしの安物だけど、ネクタイだけはアルマーニ」
そこで結衣は悪い予感に襲われた。
「それって新入社員の事?」
「当たり前じゃん!」
呆れたような声を出し
「今年入ったコンサルタント部門の若手君」
ちなみにこの会社、治験(薬の事前テスト)を生業にしている。詩音は社長秘書兼雑用係。
「人事の書類で前から知ってたけど、あれほど上物だとは思わなかった」
むぅっと唸る彼女を尻目に結衣の心は落ち込んで。
「やめてよそんな話し。だって……。ほら私、振られたばっかじゃん?」
ちょっと思い出し付け加えてみる。
「そんな事言ってぇ」
彼女はそろそろ入社式の始まる社内の中をそっと見渡した。
「70点彼氏と比べてご覧。絶対心変わりするってば。シルバーのリングとダイヤのリング位違うから。やっぱ本物だよねって感じ。あっ、でもやっぱお願い、惚れないで! 私が彼の一番乗りだから!」
そして思わせぶりに結衣に向かって笑いかけた。実のところ、彼女の好みはこってりしたラテンな男。スーツな正当派より、サンバのリズムで恋する女。その気が無くって結衣の事をからかっているのが見え見えで。その上
「2週間後」
と囁いた。
「新人研修、楽しみだね~。頑張ってお友達になって、ついでに合コンよろしく!」
「へっ!?」
思いっきりバックを落とし、結衣の世界は時間を止めた、みたいな感じだった、というか、なんと言うか。彼女だけがフリーズし、一方の詩音はお仕事モードの顔つきに戻りいそいそと社長室の方向へと消えていった。
「うっ、嘘……。最悪」
有り得ないけど、まぁ順当に考えれば、そうなる。
“ごくっ”
彼女は生唾を飲み落としたバックを拾う事さえ出来ずにいた。

 何がどうしてこんなに彼の事が気になるのだろう。彼女の中の饒舌な罪悪感が責め立てる。
『だってほら、酷い事したんだよ?』
『ジェニーなんか自殺だよ? 義理って言っても家族だよ? 彼の妹に嘘ついて、彼の事も傷つけたよね~』
『怒られて当たり前だよ。ってか彼、結衣に復讐にきたのかも!?』
あり得るな~って、心のどこかで声がして。
『そんな気持ちに負けちゃ駄目だよ!』
あれ以来身に付けた
“無駄に優等生”

“結衣”
が最悪感に向かって激怒した。
『あの日から心入れ替えて頑張って来たんでしょう?』
『私生活は私生活。仕事は仕事。今回折角認めてもらって新人研修任されたんだから、ここはきっちり応えないと。さぁ、頑張って!』
それから
『もう時間が経ってるから、許されても良い頃だよ。ってかいまだに恨んでいるってんだったら、むしろ最低な男じゃん? 距離を置くのが正解かな』
そして彼女の本心がぽつりと呟いた。
「許してもらえてる可能性って有ると思うよ、それなりに。でもね、結局やっぱ嫌われてたらって思うと、ね、怖いんだよ。もう一度巡り会って、
“最初からやり直しましょう”
ってリスタートきって、結局駄目だったら? それってさ、傍にいる分だけ、辛いよね」
体だけはきちんと動いて、好奇の目にさらされながら結衣はバックを拾い上げる。そして結論は
「やっぱ、私、今でも大樹の事が好きなんだ」
出ていた。
 にもかかわらず彼女の心は沈み、何かが引っかかっていた。そう、彼女は触れたくない一番の傷から手を引き、蓋をしていた。

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Date:2009/12/24
Trackback:0
Comment:2
Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

Comment

*

更新ありがとうございます(o^∀^o)続きも楽しみに待っています。
2009/12/28 【なつみ】 URL #- [編集]

* > なつみちゃんへ

いえいえ♪
こちらこそコメント頂いてありがとうございました♪
元気もらっています♡
2009/12/30 【廣瀬】 URL #- [編集]

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