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8 姉弟(きょうだい)の距離



 普通に
“初恋の相手”
は手の届く所にいる人のもので。例えば幼馴染。例えばいとこ。
 その人の視線や仕草に
“自分”
というものを意識し、胸に鋭い痛みを感じた瞬間、
“その人”
が自分にとって
“特別”
になる。
 彼の場合、それはあまりに身近すぎる人間だった。
「マコ姉」
いつも控えめな弟が、姉を呼ぶときだけ妙にはしゃいだ声を出し、
「なぁに、勝利」
優しい響きで真琴が答える。
「辞典のひき方教えて」
そんな事、先週学校で習ったばっかりだろう? 司は心のどこかで舌打ちをしながら視線は友達から借りて来たマンガから動かさず
「真琴姉さんだって忙しいんだからそんなの俺に聞けよ」
なんて事を言う。するとほんの数メートル先で空気が揺れ、困った様な二人の表情が彼には手に取る様に分かった。
「厳しい事言わなくていいじゃん」
彼の姉は少し声を強張らせた後
「今、暇だし」
そんな風に勝利を庇い勉強を教え始める。
「面倒臭ぇ奴ら」
彼はコミックを手に二人に背を向けた。
 そして中学一年の時の事。音楽室からの移動で帰って来た司は、クラスの前の廊下が妙にざわついていると感じた。とそこに
「ありがとう!」
聞き慣れた少女の声と人のどよめきが届いた。
「勝利、お前、姉ちゃんと間接キスだ!」
はしゃぐ声、
「何くだらない事言ってんだよ」
少年の弁解する様な響きに
「何照れてんだよ、気持ち悪い~」
笑い飛ばす可愛らしい声。それが真琴だと言う事はすぐに分かった司だった。
 彼女は勝利のいる方向に手を振り、長い髪をテレビのシャンプーのCMでも見せているかの様に払いながら、司のいる方向、二年のクラスへと続く階段の方向へと目を向けた。ひときわ目立つ上級生の姿に、みんなが釘付けになっていた。
「何でこんな所にいるんだよ」
彼女が集めるその視線の多さ、そして友達に囲まれ冷やかされる勝利を見て、司は自分でも訳の分からない怒りを爆発させた。
 彼女の手にはリコーダー。司ははっとし、先ほど耳にした
“間接キス”
と笛の先の薄いカーブを頭の中でつなげ、さっと顔を赤らめた。
「あんたに関係無いから」
そんな彼に真琴は冷たい視線を返す。彼女の声は勝利に話し書ける時と真逆の音を示していて。
 二人の間で目に見えない火花が散り、一発触発。彼は自分の怒りの正体が分からず、真琴は真琴で苛立つ弟の姿に、自分の怒りも爆発させようとした。
「本当、あんたって可愛くないわね」
それが
“勝利と比べて”
という事を直感的に感じとった司。彼は
“女の子みたい”
に綺麗な顔に青筋を浮かせた。と、そこに
「うわっ、真琴ダセっ、弟に笛借りてんのかよ」
たまたま向こうを通りかかった彼女のクラスメートがやって来て、彼女のうなじにかかる髪の毛を馴れ馴れしい仕草で引っ張った。
「うるさいわね!」
真琴は怒る仕草で彼の手を振り払い、でも次の瞬間にやっと笑った。
「しつこく絡んで来る男って、嫌われるんだからね」
身長ばかりがひょろりと高いバスケ部のホープは、真琴に執心だと下級生でも噂の男だったから。
 下僕をからかう仕草で彼をかわし、ひょうひょうと姿を消した彼女。
「司君のお姉さんって、司君そっくり。美人だよね」
名前の知らない同級生が勝手に彼に声をかけて来る。
「冗談」
彼は振り返り弟のいるクラスを見た。勝利は無邪気に笑いながら友達とじゃれている。裏面の無い地味な弟。でも堅実。彼は人から信頼され頼られている。そして兄の司の周りには、彼が
“綺麗”
な事を理由に集まって来たとしか思えない人間ばかりだ。そう、真琴を除いては。
 時々彼は
『真琴姉さんは俺が嫌いなの?』
と聞きたくなる事が有った。彼女の視線はあまりにも彼を避け過ぎていたから。そしてそれは彼の中で消えない炎になって燻り続ける事になる。
 そもそも思春期の少年が学校のアイドルの様な姉と一つ屋根の下で暮らし、同じ風呂に入り、同じ洗濯機で下着を洗っている。大人の目から見たら馬鹿馬鹿しくても、この頃の彼らにとっては普通に一大問題だったのだ。
 やがて彼らは少しづつ大人になり、その日がやって来た。
 高校時代、彼は茶道部と弓道部を兼任していた。ほぼ毎日部活で遅くなる日々だというのに、その日に限ってお茶会に必要な道具が無く家に取りに戻った司だった。
 最初はまるで気がつかなかった。なにしろ家は広く、長い廊下がそれぞれの部屋をつなげている。でも何かが彼に知らせていた。
“真琴姉さんが家にいる”
静かすぎるから、最初は寝ているのだと思った。茶会で使う袱紗(ふくさ)の在処を聞きたくて、でも寝ているのに起こすのはまずいと忍び寄った離れの二階。
「えっ?」
思わず出そうになったその声を彼はあわてて呑み込んだ。
 視界は
“真琴姉さんが病気だ”
と伝え、直感は別の事を指し示す。
 白い剥き出しの素足がピンクのシーツの上をのたうつ。
「はあっ」
切なげ吐息、キツく寄った眉間のしわ、くねる躯。まるで胸を掴み苦しんでいるかの様に見える。でも明らかに違うのは、中途半端にはだけられた胸元。いくら
“胸が苦しかったからブラを外しました”
といってもそうじゃない。それは彼に友達の家で隠れて
“鑑賞会”
をしたアダルトビデオの
“病院を受診したらとんでもない診察をさせられたお姉さん”
を連想させた。裸ではない、でもパジャマでもない。乱れた
“普段着”
その彼女は弟の存在にまるで気がつく様子は無く
「駄目っ」
そう言った。
「嫌、そんな事、恥ずかしい」
彼は言葉を失い、唖然と口を開けながらその様を凝視した。そう、
“穴があく程”
彼女の太腿の間に吸い込まれている手首から先、くちゅくちゅと響く水の音、姉が歯を食いしばる赤い頬。そしてもう片方の手はその手の中に収まりきれないふくらみを捏ね上げる。
「うふうっ」
真っ直ぐな黒髪が揺れ
「好いっ!」
悲鳴の様な声が漏れ。その足の先は小さく何度もベッドの端を蹴る。もちろん全てが見えている訳ではない。むしろ彼女のスカートの中は暗がりだ。その
“見えない先”
に彼は目を凝らし、やがて大きく仰け反りながら
「しぃちゃん、好き!」
そう叫び腰を震わせる真琴を見つめていた。彼は童貞ではない。すでに経験済みで女の子の事を知っている。でも実の姉のよがる姿は衝撃的で、なおかつ今まで知っているどんな女の子よりも
“恐ろし”
かった。だから思わずごくりとつばを飲んだ。その音の大きさに彼は驚き、絶対に覗いているのがバレたと思った。だから逃げる為に先手を打って声をかける。
「真琴姉さん」
それは見てはいけないものを見てしまった事の罪悪感を彼女になすり付ける行為。
「えっ?」
予期せぬ彼の出現に彼女は目をはっと見開く。
 本当は気持ちのいい眠りが彼女を誘っていたはずだった。だから一瞬これは夢かと辺りを見回す。でも、現実。彼女の右手は最後の瞬間のまま、まだその茂みの奥に有り
「嘘っ!」
彼女は本気で泣きたい気分で、その手を引き抜く事も出来ずに身をよじる。そして腰までめくれ上がったスカートの為に、もっとあからさまに、その丸くて形の好いヒップを彼の目に曝した。
 彼は迷った。いや、迷ったはずだった。ここで見てみぬ振りをするのが正しい選択だって。知ってる。でも彼は思春期で、高校生で、
“女体”
というものを
“知りつつ”
あった。そして何よりも、彼は長い間実の姉に
“女”
として執着して来た
“男”
だったから。
 だから彼は一気に距離を詰め
「何していたの、真琴姉さん」
分かり切っている事を聞き
「これは、何?」
その大人に成り代わる中細の腕で彼女のまだ湿りを帯びた右手をそっと引き抜いた。


    もどる    禁断の目次    つづく
   



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Date:2009/12/11
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Thema:恋愛:エロス:官能小説
Janre:小説・文学

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