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ストーリーズ・イン・シークレット

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82 リアル



 今更だけど、キスって、好い。最初はそっと触れる様に優しく。それから少しずつ大胆に。お互いの吐息を舌で絡め合い、内側に篭った熱気を放散しながら焚き付けて。ふとした切れ間に見つめ合い、高ぶった心を落ち着けるかの様に振る舞いながら、もう一度。擦り合う唇の内側がしっとりと濡れ始め、腫れ始め、一つに解け合う瞬間を乞う。
「ねぇ」
私は彼の中に
“それから先に進んで欲しい”
とおねだりの言葉を零す。彼の指がおずおずとパジャマの一番上のボタンに引っかかり、私は体を起こし彼がやりやすい様に向きを変える。勝利の目の前で二つ目のボタンが外れた瞬間、彼は驚いた様に手を止めて大きな瞬きを二回した。
「ねぇ、どうかした?」
微笑む私に彼は
“何でもないよ”
の仕草で首を振り、その先へと駒を進める。現れたのは肌の半分をやっと隠す程度のベビードール。柔らかに揺れる赤紫のシフォンベールに、縫い取られたパールビーズ、パックリと割れたスリット。
「ねぇ、可愛い?」
私は年甲斐も無く首を傾げる女の子のポーズ。それから動きを止めてしまった勝利をよそに、胸を軽く突き出しながらパジャマの袖を焦らす様に外した。この大胆なベビードールをプレゼントしてくれたのは典子。
『どうよ! これを選んだ私のセンスを褒めてよね。もう、男だったらイチコロだから』
なんて自慢げに言われても、初めて目にした時にはあまりのエロさに驚き、着るかどうかぎりぎりまで迷っていた。だってそうでしょう? ここまで露骨にセクシーだと、何だか変なお店のスタッフになった気分。それでも私はこの下着が持つ妖しい魅力に勝てなかった。それは目の前の勝利も同じらしい。彼は半開きの口元で私のパジャマのズボンのウエストに指を差し入れると、ベビードール越しの私の素肌にキスをし、
「綺麗、綺麗だ」
と言いながらズボンを脱がせようとした。私は小さく腰を振り、そんな彼を助ける。もちろん、ショーツだってお揃い。きわどいラインをぎりぎりいっぱいのレースが被い、その奥に秘めたぬるぬると光る欲望を隠す。
「何だか脱がせるのがもったいない気がする」
彼は手早く自分だけ裸になると、私の上に柔らかく体を重ね下着越しに体をすり合わた。触れ合う肌と肌の間、軽やかな下着の生地が揺れ、くすぐったい様なもどかしい様な軽い痛みを覚えた。
「だったらこのまましちゃう?」
私はクスクスと笑いながら、ショーツの端に指を掛け、見えそうで見えないぎりぎりまでその小さな布を引き下げる。
 この夜、私は
“大胆”
だったけど、これは昔の
“大胆”
とは違う。そう思った。昔の私は
“エロい女”

“演じている”
だけだった。でも今の私は何もかも忘れ
「勝利の事、大好きよ」
現実の海原(うなばら)に飛び込む。見下ろす彼の融け出しそうな瞳が
「俺はきっと、涼子が思っている以上にもっともっと、涼子の事が好き」
少し冗談まじりにそう言うと、部屋の灯りが消えた。彼は私を包み込む様に腰に腕を回し、ふわふわのベビードールを纏った私のお腹に顔を埋め
「気が狂いそうなくらい、涼子が好きだ。もう、やっぱ俺、狂ってるかもしれない」
とその手に力を込めた。
 静かな夜、二人きり。彼は私をまるでバージンみたいに扱って
「痛くない?」
なんて言いながら指を差し入れる。
「んん、痛くない」
だってこんなに濡れてるよ? なんて事思いながら、七年ぶりのセックスに気持ちが張りつめて、いやに締めちゃってるなって自覚も有って
「でも、緊張してる。けど、勝利の好きにして欲しいなって気持ちも、あるよ」
なんて女の子なセリフを言ってみたりもする。
「けど、優しくしてもらえると嬉しいかも」
私は月明かりの中で顔を赤らめた。すると彼は
「うん」
の返事の後、私の膝の裏に手を入れ、ささやかな抵抗の隙間に潜り込み、暖かな舌を中央にある潤い出した内側から外側に向かって使い始めた。
「んっ……!」
堪える嗚咽と、素直な体。蕩蕩(とろとろ)と溢れ出す蜜の滴りに、疼き出す私。
「あっ、嫌、まだ駄目!」
私は彼の髪を思わずつかみ、逃げる様に太腿を振るわせた。
「刺激、強すぎ」
始まりの少し濃い目の体液が、彼の尖った舌の先で固くせり出した女のあそこにこってりと、何度も何度も擦り付けられ、痺れた。
「あっ、駄目!」
それはもっとして欲しいのサイン。勝利はスピードを緩め、そのくせねっとりと絡む様に舐め上げる。
「んっ、んっ、んっ!」
私はあっけない程簡単に昇り詰め
「勝利の、馬鹿」
ひくひくと痙攣を残すあそこを彼の顔から外し、頭を引き寄せ、唇を奪った。
 私達は夢中でお互いの体を貪り合う。体の隅々まで舐め合い、キスをして、まるで野生の動物みたい。
 私の中に入る時、彼は息を詰め、堪えながらも楽しんでいた。
「早く、して」
泣き出しそうな私の声を無視し
「我慢して」
なんて言いながら、余裕で私の胸を撫で上げる。
「痛くしたくない」
なんて。勝利って意外と意地悪。
 それから彼の上に乗り揺れながら、クッションで体起こし半眼で私を見つめようとしている彼に
「勝利が、好き」
を何度も繰り返し、その度にほころぶ彼の口元を見た。
 お互いに名前呼び合い、私は彼の背中に爪を立て、勝利は私の躯の柔らかい部分至る所にキスマークの花を咲かせる。汗に濡れ、ふと気を失いそうになる快楽に二人並んで宙を飛んだ。

 目が覚めたのは明け方。昨日の夜は結局寝るのが遅くなり、というか多分遅かったはずで、その反動なのか中途半端に目が冴えてしまった、そんな感じだった。
 私の横には勝利。彼は首を傾げ私の頭に自分の頭をもたげる様にしながら安らかな寝息を立てている。そしてうっすらと生え始めた無精髭の口元が、小さく寝言で
「涼子」
と動いた、そんな気がして私はひっそりと笑った。
 カーテンの隙間からほんのりと差し込む朝日が部屋を満たし、小鳥の鳴く声が爽やかな春の香りを運んでくれる。なんて素敵な朝なんだろう。そう思いながら突然トイレに行きたくなった私は彼を起こさない様にそっとベッドを抜け出した。
 そしてトイレで気がついた事。
「嫌だ、血、出ているし」
“セカンドバージン”
っていうヤツは本当にそうなるものらしい。私は昨日の夜に感じた淡い痛みと、それから起こった引きちぎられる程の官能の世界を思い出し、顔を赤くした。
 セックスって体だけの事でもないし、心が有れば良いって事でもない。私は彼に愛されながら、体の全ての細胞を目覚めさせた、そんな感じがした。
 そしてふと体に汗の跡が残っている事に気がついて、勝利には悪いけど一人で先にシャワーを浴びさせてもらう事にした。
 高級ホテルのシャワーヘッドは水の出方が穏やか。それでもできたてのキスマークには少し刺激が有ってちょっとだけひりひりしたけれど、私はむしろその喉の乾きにも似た肌触りを楽しみんだ。でも石けんはつけない。何となく私の体には勝利の香りがついている気がして、それも洗い流すのはもったいない気がしたからだ。そして濡れてしまった襟足を乾かしている時の事だった。
「涼子?」
の声と共にドアを数回ノックする音が聞こえた。
「今シャワー浴びてたとこ」
そう言いながら私は鍵を外しほんの少しドアを開ける。するとそこには口元は笑いながら、それでいて目はちっとも笑ってなんかいなくって、真剣に私を探そうとしていた、そんな勝利が立っていた。思わず私は
「ご免ね」
そう謝っていた。
「一人でベッドを抜け出して」
すると勝利も
「いや、ご免、いいんだよ」
なんて言いながら、目に見えてその頬を弛めた。
「待ってて、今戻るから」
私はバスタオルをフックに掛け何気なく二人が映っている鏡に目を向けた。私の顔は私の顔。かなり見慣れている。でも鏡の奥の勝利の顔は私が知っている勝利の顔とは全く違う、別人の顔だった。でもよく見ると確かにそれは勝利で。彼の鼻梁は左に曲がっていて、目元も左側が少し奥二重だった。右の眉毛の方が少し短くて、口元の皺も右の方が浅い。これってあれだなって思う。現実に立ち向かう勇気が無く、鏡に映った一面しか見えない逆向きの彼を本物の彼だと思い込んでいた私の浅はかさを象徴しているみたいだって。だから私は振り返り
「戻ろ」
ガウンさえ着ていない彼の胸に抱きつき、まだ少し不安の残るそのリアルの眼差しを受け止める。
「もっと勝利の傍に居たいから。二人だけの時間、大事にしよう、ね?」
子供達のいる騒がしい日常に戻る前、私達だけの世界をもう少し。すると彼は、
「そうだね」
と言うや否や、私の体をヒョイッと持ち上げた。思わず
「きゃぁ!」
なんて悲鳴を上げてしまった私をよそに、彼は大股でベッドまで戻ると、その横でくるくると回り出し、最後は二人でなだれ込む様にベッドにダイブした。
「もう~」
子供みたいな勝利。彼は笑いながら私を抱きとめると
「どこかに行ってしまったかと思って、心配したんだ」
と気持ちを打ち明けた。
「というか、涼子を信用していないとかそういう事じゃ無くて、その、あまりにも幸せすぎて、夢だったらどうしようかなって、思った」
今の彼の目は笑っていた。そう。私も変わった様に、勝利も変わったんだ。
「馬鹿ね」
私達は確実に過去の過ちを乗り越えている、そんな実感が湧き上がる。
「一生一緒だって、誓ったでしょ? 忘れないでよね」
私はそう言いながら彼の唇に唇を合わせ、昨晩たっぷり味わったはずのめくるめく甘美な世界を呼び戻し、自分のものにした。
 そして再び微睡(まどろ)むうたた寝の浅瀬を漂いながら、
「ねぇ勝利」
私は彼に向かって呟いた。
「落ち着いたらで良いんだけど、今度は女の子も欲しいな」
って。すると私の体に回っていた彼の腕にぎゅっと力がこもったかと思うと、私は完全に彼の中に身を埋めていた。そして彼は何も言わない。ただあの泣き出しそうな目で私を見つめていて。
「女はね、愛している人の子供を産んで育てる事が一番の幸せなんだから」
私は心の内を彼に伝えた。苦しい事や辛い事、沢山有るけど、でもやっぱり子供産んで良かったし、心のどこかで子供達に受け継がれた勝利の遺伝子を誇りに思っている、そんな私がいた。
「不思議だね、今涼子の瞳の中に俺の未来が見える気がするよ」
彼はそっと呟やいた。
 現実の世界に戻って来た私達。そう、これから起こる未来の出来事が予想に反して辛く厳しいものであったとしても、きっと二人でだったら乗り越えられる。そしてもう私達はお互いから目を反らし合う、あの冷たい鏡の底の世界に二度と戻る事はないだろう。


            In the mirror ~鏡の底~   終わり

              2009/12/06  ご愛読に感謝    廣瀬 流が留


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Date:2009/12/06
Trackback:0
Comment:10
Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

Comment

*

 脱稿 おめでとうございます。ごくろうさまでした。

ごめんなさい、ごめんなさい、もう少し長く読みたかったです。
2009/12/07 【rom】 URL #mQop/nM. [編集]

*

とっても素敵な素晴らしいお話でした。
ありがとうございました。
終っちゃって寂しいけど、時々読み返してみたいと
思います。

はぁ~、、勝利素敵♪
涼子も女としてもちろん素敵♪
2009/12/07 【tomo】 URL #- [編集]

* > rom ちゃんへ

これまでおつき合い頂きありがとうございました♡
気に入って頂いてとっても嬉しいです。
ところで最終章はお気に召して頂けたでしょうか。
うふふっ♪
2009/12/07 【廣瀬】 URL #- [編集]

* > tomo ちゃんへ

いつも応援してくれてありがとう!
励ましてもらってここまで書けました。
感謝です♡
2009/12/07 【廣瀬】 URL #- [編集]

*

お疲れ様でした!
ひそかに楽しませていただいてました。
今後も素敵な作品期待しています。
2009/12/08 【】 URL #7RorUgFk [編集]

* > j 様へ

楽しんで頂けて何よりです♪
一息ついたらまた書いてしまうと思うので、
その時はまた是非おつきあい下さいね。
ありがとうございました。
2009/12/08 【廣瀬】 URL #- [編集]

*

 うふふっ♪  大人の女人ですね。さすが!
2009/12/08 【rom】 URL #mQop/nM. [編集]

* > romちゃん

ありがとうございます♪
今の日本の常識だと、女は若くないと女じゃないって風潮有りますよね。
それってつまらない!
大人の女こそ楽しまなきゃ! なのでした。
2009/12/09 【廣瀬】 URL #- [編集]

* 完結おめでとうございます

はじめて書き込ませていただきます。
こっそり通っていました。
ネットの中でこんな深い小説に会えるとは思っていませんでした。
ステキな作品に出会わせていただきありがとうございました。
これからの涼子と勝利の幸せを願います。
2009/12/12 【Sai】 URL #- [編集]

* > Sai 様へ

こちらこそコメント & 最後までおつき合い頂き
ありがとうございました。
重たい話なので読んでいて疲れたと思います。
でも書いていて本当に楽しかったです♪

涼子ちゃんと勝利には
これからもいろいろ山あり谷ありだと思います。ですが、
過去から学んだ二人はお互いの気持ちを素直に話し合う事で一つずつ解決し、
幸せな未来を築いて行くことと思います。

ハッピーエンドは気持ち良いですよね♡
2009/12/13 【廣瀬】 URL #- [編集]

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