ストーリーズ・イン・シークレット

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77 小姑“ダディ”



『言い忘れていたけど、クリスマスには他の家族も集まるから』
それは後から彼に送ったメール。勝利はきっと、他の家族って言うのは私の兄弟か誰かだと思ったんだと思う。でも本当は違う。それを前もって言うべきかどうか悩んだけど、結局止めた。下手な入れ知恵はやめた方が良い。
 勝利がやって来たドア、温められた空気と冷えたが空気入り交じる。花籠を受け取り先を進む私に、子供達に引き連れられやって来るリビング。
「よう」
ソファの上には我が物顔でふんぞり返っているジョージがいた。
 ジョージは病気にかかっていると言えあいかわらずガタイもよく、格闘家の様な風貌で、当然私とは似ても似つかない。その彼の事を
「勝利。ダディの事、紹介するね」
子供達は屈託のない顔で引き会わせる。勝利はほんの少し動揺を見せ、
「始めまして」
と背中を丸めた。
「このおじさんはね、パパのいとこのおじさんで、僕たちが産まれる時から一緒にいてくれた人なんだよ」
「ずっと仲良しなんだ」
「だから僕たち、おじさんの事“ダディ”って呼んでいるんだ」
「でね、この人がね、勝利」
天仁が勝利の腕を引っ張り、ジョージがゆっくりと体を起こし前にかがみ込む。
「ああ、君ね」
コイツの前世は
“ぐうたらだけど風格だけはあるオスライオン”
だったに違いないって思ったね。
「こいつ等から」
ジョージは口元だけは微笑みながら子供達に顎をしゃくった。
「君の事、聞いてるよ」
“天仁を助けてくれたおじちゃん”
と。子供達の言い草はまるで
“スーパーマン”
あわや車にひかれそうになった天仁を、三回転半宙返りで登場した勝利が抱きかかえ、突っ込んできた車を飛び越しスタッと着地。そんなノリだった。
「あっ、はじめまして」
でも勝利はそんな
“武勇伝”
を語られているなんて知らないし、すっかりジョージに迫力に負けして、借りて来た猫みたいにちんまりしている。
「余田勝利と言います。ご縁が有ってお邪魔しています」
なるほど、折り目正しい彼は長い事営業畑にいますって感じ。典子の
『あいつ、実は出世株だよ』
の言葉はまんざらじゃなかったんだって思う。ジョージはまるでここが自分の家の様な態度で軽く片手を上げ
「よく来たな」
と一人がけの椅子を指差した。
「まぁ、座れば」
自分が他人に及ぼす影響力がどれほど強いか分かっている、男の優劣を示すゼスチャー。
「ありがとうございます」
それに対して勝利は素直に従った。
 全く、ジョージってヤツは忌々しいったらありゃしない。それでもこの“家族で過ごす”
クリスマスに彼にいて欲しいって思うのは、結局私はジョージが好きだからだし、コイツがいなくなったら私の人生のワンピースが無くなってしまう、そんな寂しさがあって、彼が元気でいる限り一緒に過ごしたいって思うからだ。それにもし勝利が家族になるんだったら、ジョージ抜きで家族になるって言うのは私的にも子供的にも無いだろうなって思うから。だから勝利にはちょっときつめでも、絶対につき合って欲しい人だった。
「この人ね、私達とは古い付き合いで……」
紹介しかけて
“私達”
ってのが子供じゃなくて稔の事を指しているって自分でハッと気がついて、その上
“古い”
ってどんなだよって思い言いよどみ、
「コイツの事は高校の頃から知っていて」
何とか逃れようと言葉をつないでから、しまったなって思う。
「その、稔とは、亡くなった旦那とは高校の頃からの付き合いで、その頃からの知り合いで」
私は言いにくい言葉を頑張ってはっきり聞こえる様に声を出した。
「さっき摩利も言ったけど、その亡くなった旦那のいとこで、私にとっては“小姑”みたいな人、です。正直嫌みな所はあるけど、悪い人間じゃないから」
なんとかそこまで何とか言い切って
『だから勝利もこの人の存在、認めてね』
って心の中で呟いた。
 そんな私に向かって
「ひどい言い方だな、涼子」
ジョージはわざとらしく名前を呼び捨てにする。それから勝利に向かって
「ま、今の所、この子達の“父親代理”って所だな」
と笑い、素早く私に含みのある目配せをした。
 それは
『分かっている』
のサイン。最初から写真家なんかしているジョージの目を誤摩化せるなんて思っちゃいない。きっとコイツの事だから一発で勝利の事を
“子供の父親だ”
って見抜いたんだと思う。現実の姿は意外とそうでもないけれど、写真に写した時の天仁は、目元や笑い方、全てが勝利に生き写しだ。
「そう、今の所はね」
私は皮肉っぽく聞こえる声でそう答える。
「ま、あんたは一生“ダディ”のままで頑張って頂戴ね」
とりあえず一息つきたくて、勝利には悪いけど
「料理仕上げちゃうから、しばらくみんなで遊んでてね」
私はキッチンに逃げ込んだ。
 今日は家族のクリスマス。稔がいなくなってから二回目のクリスマス。去年はがらんとした部屋が寒かった。うつ向き気味なジョージと、カラ元気で振る舞う子供達。でも今年は少しいい感じ。
 子供達は屈託なく、勝利もジョージも程よい距離で遊んでいる。オーブンの中からはチキンの焼き上がる良い香りが漂い、冷蔵庫の扉の向こうでは苺のケーキが出番を待つ。私はキッチンのカウンター越しにボードゲームを囲みながら微妙な小競り合いをしている四人を眺め、今の幸せを感じていた。そんな中
「うわっ! 何で婚約指輪に給料の二倍も払うんだよ!」
人生ゲームの一コマで天仁が絶叫し、
「そういうものらしいよ~」
摩利が
「諦めろ」
と言う。しかもついでに
「やっぱ勝利も婚約指輪買うの?」
とか言い出して。
「勝利の給料つてどれぐらい?」
身を乗り出した天仁が、偽のお金を払いながら問いかける。
「秘密」
勝利は今度は動揺せずに切り返し、ルーレットを回した。
「やばっ! 俺“人生最大の賭け”だって」
「うわっ! 勝利、頑張れ!」
騒ぐ二人に
「大丈夫。俺、勝負強いから」
なんて、チラッと私の方に投げかけられる視線。何だか勝利らしくない言い方だけど、ジョージがいるからあえてそんな感じなのかもなって思う。
「強気じゃん」
ちゃかすジョージに
「負ける気、しませんから」
勝利は笑って答えてた。
 やがて卓ちゃんが
「遅れてゴメン」
とやって来る。
「待ってたよ、お兄さん!」
子供達が勝利に卓ちゃんを引き合わせ
「僕達の“お兄さん”」
顔を見合わせクスクスと紹介する。
「本当のお兄ちゃんじゃないけど、でもお兄ちゃん」
いつもジョージと一緒にいる卓ちゃんは、成り行き的にそう決まっていた。
「僕たちね、意外と家族が多いんだよ」
それから鳴らされたクラッカー。子供向けのなんちゃってシャンペンを綺麗なグラスに注ぎ、みんなでポンポンのついた赤い帽子を被り乾杯をする。子供達が先頭になって歌うクリスマスソング。行き交うプレゼントの箱。カラフルなリボン。
「お爺様とお婆様からも届いてるよ」
稔の両親にはお正月には会いに行く。でもその前に必ずこうしてプレゼントが届いた。
「僕たちって幸せだね~」
「来年も沢山プレゼントもらえると良いね~」
子供達はケーキを片手に床に広げたプレゼントで遊び出し、勝利やジョージに向かって見せびらかし始めた。
 勝利からのプレゼントはプラネタリューム。それからそれに合わせたCDだった。灯りを消したリビングに星が降り、柔らかなメロディーが流れる。ジョージからは昆虫の写真集が二冊。卓ちゃんはお揃いのおしゃれなリュック。稔の両親からはレゴブロックで、私の両親からもレゴブロック。しかも同じシリーズで違う種類。まるで示し合わせたみたい。そして私は二人が欲しがっていたアニメのDVDをプレゼントに包んだ。ちなみに毎年現れる
“謎のサンタさん”
は、24日の夜に一年間のアルバムを届けてくれるのが習わしだった。
 当然、子供達から大人への手作りのプレゼントも披露され、私達は折り紙で折ったパンダや花を受け取り、その小さいなりに頑張っている作品にうふうふと笑い合った。
 そしてなぜかクリスマスツリーの下には紙袋が一つ残っていて、それに気がついた天仁は
「これ、誰の?」
と頭を突っ込んだ。
「あっ、それは、ママへのプレゼント……」
少し気まずそうに勝利が手を上げ、その紙袋がバケツリレー方式で私の所に届けられる。もしかしてネックレスかなって思ったけど、大きさが違う。じゃぁ定番でバックかな、なんて思いながら
「ありがとう」
受け取ったそれは意外と重くって、
「え? 何?」
私はみんなの見つめる中で綺麗にラッピングされたプレゼントを取り出し、その淡いブルーのリボンを引っ張った。すると
「可愛い!」
中から出て来たのは陶器で出来た双子の男の子。多分リヤドロ。透明な肌にほんのりと色づく頬、柔らかな曲線に可愛らしい仕草。これってまるで赤ちゃんが産まれたお祝いみたいだよって思いながら
「ありがとう」
を言う。掌に乗せた二人はまるで摩利と天仁の小さかった頃みたい。それはほんの数年前の事なのに、物凄く懐かしいって思う、綿菓子の様に甘い思い出。
 子供達は再び自分達のプレゼントに没頭し、私はそっとその場を離れ陶器の双子をダイニングテーブルに飾った。そのプレゼントをずっと眺めていたいって思ったけど、みんなの視線が恥ずかしくってそれは出来なかったから。それからテーブルの上の空いた皿を持ってキッチンへ行くと、ジョージが
「手伝うよ」
とか言ってやって来て、片方の眉を引き上げた。その含み笑いに
「なによ」
私はつっけんどんに返事をする。勝利の事を言いたいんだろうなって事は分かってた。
「別に~」
からかう様な間延びした声。ジョージは洗い物を手伝うフリで私の肩に自分の肩をそっと押し当て、
「好い男そうじゃん」
彼らには聞こえない様な声で囁いた。
「まあね。天仁の事助けてくれたし」
私はふとジョージから目をそらした。コイツが何を言いたいのか分かっているって事を伝えたかったけど、なかなかそれは言葉に出しづらく
「それに、ほら、その」
“見れば分かるでしょう?”
なんて。するとジョージはにんまりと笑い、こっそりと視線を送ってきた勝利に向かって片手を振ってみせた。
「実の父親だし?」
コイツは私が言いにくいと思っている事をさらりと口にした。
「ま、まぁね」
すると
「何照れてるんだよ、らしくない」
ジョージは勝利から目をそらさないまま含み笑いをする。
「でもまぁ、何で今更ってのが俺の正直な感想だけど、な」
「あっ、うん、そうだよね」
ジョージはかなり性格ひねくれてはいるけれど、彼なりに私達親子を愛してくれているって感じてた。本当はもっと近くに居たいって思っているっているのに、最近では私が彼氏を作れる様にって、あえて距離をおいているって事ぐらい知っていた。そう、正に本物のお兄さん、男の小姑だ。だから、一度破綻した恋人同士が上手くよりを戻せるなんて、そんな夢見がちな事は現実には起こらないって疑っているに違いない。
「お前とあの男を見ていて、焼けぼっくいに火がついたって言う感じとは違うんだよ。子供が出来た時にどんな経緯が有ったかは聞かないけどな、お前があいつと一緒にならないって選択した訳ってヤツが有るはずだろう? なまじ好い男っぽそうに見えるから、そこがさ、余計に引っかかっていると言うかなんと言うか」
ジョージは彼らしくない感じで曖昧な言い方をした。
「分かってる」
コイツの気がかりは手に取る様に分かる。
「ご免ね、心配かけて」
すると
「本当に、らしくないなぁ」
ジョージはさもおかしそうに笑った。その声に勝利が振り向きかけ、それをぐっと堪える気持ちが彼の背中から伝わって来る。
「お前も惚れた男を相手にすると人が変わるんだな、分かったよ」
それから軽く手を拭くと
「さて、アラ探しついでに虐めて来てやるか」
とキッチンを後にした。


   戻る   鏡TOP    続く


         あとがき



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Date:2009/10/30
Trackback:0
Comment:6
Thema:自作恋愛連載小説
Janre:小説・文学

Comment

* お風邪

お元気になられてヨカッタですね。私はこのお話、大好きです。お体大切に、次のお話待っています。
2009/10/30 【菜々】 URL #- [編集]

* > 菜々 様へ

コメントありがとうございます♪ ちょっと嬉しくて、かなりほっとしています。
頑張って次のお話も書きますからね!
2009/10/30 【廣瀬 】 URL #- [編集]

*

みんな元気になりましたか~??
無理しないでくださいね。

ジョージの存在、結構怖いですよね~。
勝利は、早く二人になって涼子の説明を
聞きたいんだろうなぁ。
実際聞くかはわからないけど。。

でも、確実に幸せに向かってますよね!
2009/10/31 【tomo】 URL #- [編集]

* > tomo ちゃんへ

ジョージのモデルは照英さんだったりしますが
(照英さん、最近NHKの子供番組によく出ていたりします♪)
一緒になりたい女性の家に遊びに行って、
このテの人が幅効かせていて、威嚇して来たら
結構退きますよね~。
勝利、試されています ♡

ご心配頂いた廣瀬家ですが、今はすっかりみんな元気になりました!
tomo ちゃん、ありがとうね!
2009/10/31 【廣瀬 】 URL #- [編集]

* 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/11/01 【】  # [編集]

* > 10/30 鍵コメのS様へ

こちらこそはじめまして。コメントありがとうございます。
私は最初他の方の小説を読んで、現実との差というか
綺麗すぎる部分が呑み込めず、だったら自分で書いてみようかな、と始めました。
その為私のこだわりは生身の人間がもつ、
むしろ恋愛小説とは似つかわしくない様な
どろどろとした醜い感情の部分だったりします。
それは多分、私同様、読み手の方も持っている負の部分だと思っています。
でもやはり話しの根底に希望が残って欲しいともうのが本心なので
主人公達が悩み苦しみながらも最善の方法を選ぶ事で
読み手の方にもより良い人生を送れる様な
エールを送りたいと思っています。

実は私、現代小説をほとんど読みません。それは内容が作為的で
読み手をコントロールしようとする意図が見えるからです。
反対に一番面白いのは、ノンフィクションだと思います。
現実の世界には沢山の苦しみや悲しみ、努力や不合理が詰まっていると思います。
それを乗り越えて生きている普通の人が一番感動的だと思っています。
S様もこれまでの人生、色々有ったと思います。
後悔を感じる事も有ったと思います。
ですがそれはS様がその時に選んだ、正しい選択だったと私は思います。
S様がその道を選んだのには理由があったのです。
最善の道を考えに考えて出した結論です。ご自身を責めないでください。
ましてや、他人が非難したりどうのこうの言う事は有りません。
ですからこれからも堂々と生きてください。

私の知り合いにも脳挫傷の後、生死の境を彷徨う程の手術をした女性がいます。
それでも彼女は強く生きていて、その姿に美しさを感じています。
人生悪い事ばかりではないと思います。
きっとS様には神様が
これから人の役に立つ何かを期待しているのではないでしょうか。

人生には必ず味方になくれる人がいます。その人に甘え、力を借りながら
これから先の長い人生を楽しんでやって行きましょうね~。
2009/11/01 【廣瀬 】 URL #- [編集]

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