ストーリーズ・イン・シークレット

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52 鏡の外

 目の前の勝利は打ちひしがれていた。それはあたしが覚えているどんな勝利とも違って見え。ここに来て初めて彼の本当の姿を知ったんだって思った。あの安いホテルの一室で、彼の本心を直視するのが怖くって、いつだって彼を鏡越しに見ていた。そして鏡の中の視線があたしという女に向いている事を確認して安心ていた気がする。その上本物じゃない彼の事を
“いつだって普通の人間”
って。格好よくって、程よくエロくって、
“わきまえている男だ”
って見て、どこかほっとしていたんだと思う。そう、あたし達は臆病で、ずっと鏡を通してしかお互いを見る事しかできなかったんだって気がついた。だから本当の姿を知る事が出来なくてお互いの演技を真に受けていたんだって。
 寂しい。凄く寂しかった。あれからずっと勝利の事考えない様にしていたし、思い出さなくもなっていた。だから今更こいつの気持ちなんかどうでも良いって思ってた。最低な過去は捨てるに限る。それが今日、彼だって苦しんだんだった事、気づかいた。本当はここ
“復讐”
が果たされたって、あたしだけが幸せになれたって喜びどころかもしれない。でもそんな事よりもっと、すれ違ってしまった過去が悲しかった。あたし達は
“悪くなる”
事が怖くって
“最悪”
な方向に突き進んだ。本当、臆病者。
 あたしは苦しんだ。この数ヶ月の間に一生分苦しんだと思う。あの子供を中絶しようって決めて過ごした日々はあたしの中から無くなる事なんかないし、むしろ稔と過ごしている幸せな瞬間にこそ蘇り、あたしがどれほど馬鹿な女だったかを思い知らせてくれる。時折思い出した様に襲って来る後悔をあたしは必至で振り払い、稔との生活を守ろうとしているんだから、どう考えたってあたしの方が勝利より何倍も辛かった。これからだってきっとそうだ。だからやっぱり謝ったからって許せない。むしろ悔しい。それなのにその
『許す気なんか無い。』
の一言をなぜか言えずにいた。それにもし勝利を傷つけたいって思ったら
『あんたの事は二度と思い出したくないから。完全に忘れるつもり。』
ってのが一番残酷だって今のあたしは感じていたけれど、その言葉はあたしのお腹の底でぐるぐるとくだを巻いていて、口から出て来る事はなかった。悔しいけど、憎いけど、あたしはお互いがこれ以上不幸になんかなりたくなかった。本当は、幸せになりたいんだ。過去のあたし達は幼く愚かで、だからこそ今救いを求めている、そんな気がした。
 あたしは唇を噛んで行き場のない感情を抱え込んでいた。もしかしたら勝利を助けられる一言を言えるかもしれない、そんな事を考えながら、でもそれは言いたくないっても思ってた。その重苦しい沈黙を破ったのは勝利の方だった。
「あの頃の俺は」
彼はそれがまるで遠い遠い昔話しの様に話した。
「涼子と一緒になれる夢、見てた。」
と。
「みんなが知ってる様なホテルのチャペルで結婚式挙げて、花吹雪の中歩いて。ハネムーンには俺が出張で行ったイタリアの小さな街案内してあげたかった。平凡だけど最初は小さなマンション借りてさ、笑われるかもしれないけど、涼子がエプロンつけて俺の帰り待っててくれて。たまに花とかケーキ買って帰って、週末は友達が遊びにきてくれてさ。いつか子供が産まれて、家族みんなでキャンプしたりして。本当、馬鹿みたいだろう?」
彼は右手をふっとタバコの入っているポケットに伸ばし、その手を引っ込めた。
「涼子見る度、夢見てた。もう、ほとんど妄想?」
笑い声は乾いていて笑えない。それは彼も気がついている。
「いつ好きだって言えば良いのか迷ってた。でもそれ言ったら二人の関係が終わってしまうかもしれないって思うと言えなくて。いつまでもこのままじゃいられないって分かってるから、いっそ涼子が妊娠でもしてくれないかってすら思ってた。」
それは皮肉にも現実になったけど。顔歪めたあたしに
「ゴメン。」
彼はそう言いうつむいた。
「いいから。続けて。」
今の彼は醜い。自分がやった事にさも正当性があった様な口調で、過ぎた事の言い訳をだらだらと繰り返し。でも本当は、あたしが半年以上前に絶対に知っておかないといけなかったはずの
“人間としての勝利”
だったんだって感じた。誰でも持っているはずの格好の悪さや矛盾から目を背けたことがあたしの大失敗。だから今目の前の彼から逃げ出す事なんか出来なくて。唯頷く。
「涼子との生活が欲しかった。いつでも目の端に涼子がいて、エビアンとクロワッサンが好きだとか、でも洋食より和食党だとか、涼子が持ってたボディソープがどこのブランドかってのも知ってて、全部組み立てながら一緒に暮らす日を夢見てた。」
それはあたしが初めて見る饒舌な勝利。
「それが壊されたって思った。」
古池の事を言っているって気づいたのは少ししてからだった。
「噂の有った金持ちの友達とは出来てないって確信は有った。だって俺、いつも涼子の体に印つけてたから。」
何言ってるのか分からないあたしに
「キスマーク。」
彼はその言葉を口にし、視線があたしの太腿の上に投げかけられてそらされて。
「涼子と過ごした夜、俺、かならず涼子には気づかれない様にキスマークつけてた。俺の印にって。他の誰にも触らせない様にって。卑怯だって分かってて、そうやって俺の存在示してた。」
「あっ!」
あたしの中でつじつまがあった。と同時に卑怯だよって、本当にそれは卑怯だって思った。惨い(むごい)って。もしあたしに本命ができたりマジ彼がいたらとんでもない事になってたんだから。それでもきっとこれも合わせ鏡だったんだって事に気がついていた。彼が完璧だったのは外側の殻の部分だけ。内側は嫉妬深い嫌なヤツ。でもそれはあたしも同じ。あたしだって勝利の事、独り占めにしたかったんだから。そんな事を考えてるとこに
「それが横から現れた男にかっ攫われた。」
彼は続けた。
「それまでにもう俺、おかしくなってたから。あの古池ってヤツがしゃしゃり出てきた時、トリガー引かれた気分だった。頭の中で何かが爆発した感じで。涼子の事、壊した。」
あの日の事は
「忘れたいから。」
思わずうつむきお腹を撫でた。あの2流の鬼畜系AVみたいな馬鹿げた出来事は忘れたいんだって。あんな犯罪じみた行為の所為で今のあたしの幸せがあるなんて、どう考えてもおかしい。痴漢にあって、そいつを警察に引き渡している時に電車が事故起こして
『俺が助けてやったんだ、ありがたく思え。』
って言われる様な不条理だ。そんなあたしの感情を読み取ったのか
「ゴメン。」
彼は短く言って、より一層背中丸めた。
「涼子の事めちゃくちゃにした後、俺、本当におかしくなっちまったんだよ。朝起きて頭痛くって吐きそうで。最初頭の中で出血起こったのかもって位酷くてさ。脳外科受診した。そしたら
“ストレス”
って言われて、仕方ないから痛み止め飲んで毎日出社してた。営業も馬鹿みたいにテンション上げてやらないと体保たなくて、変に成績上がったりしてさ。そんな頭で道歩いてて、涼子そっくりの後ろ姿見かけると思わずなんにも考えずに追っかけて声かけてた。何話せば良いのかまるで分からないのに、何でも良いから声かけないとって。必至で追いかけて捕まえて。でも捕まえてみるとその人は涼子じゃないんだよ。幻見てるみたいだった。俺、不審者みたいに何度こもれ繰り返してて、ある時気がついたんだ。涼子はもう
“死んでいる”
って。」
彼の声は涙で曇っているみたいだった。
「俺が殺したんだって。」
その手ひらを広げ、彼は不思議そうな仕草でぼんやりと見つめた。
「俺のした事が、涼子の命、奪ったって感じた。だから反対に絶対お前の事見つけなきゃって決めた。取り戻したかったしやり直したかった。でもそれ以上に涼子の幸せってなんだろうってずっと考えてた。自分がしでかした事なのに、今のお前が傷ついていないかなって。苦しんでいないかなって。生きてるのかなって。もし助けられるんだったら、本当に馬鹿だけど、もし助けられるんだったら血の1滴でも残らず涼子にやりたかった。目の前に悪魔が現れた時、魂売り渡す心の準備、してた。『涼子を幸せにしてくれ。』って。俺、自分が壊したものがこんなに大事なものだったのかって、後から気がついたんだよな。壊してから初めて、取り返しのつかない事したんだって。何で大事に出来なかったんだろうって。本当に大切なのは涼子なのに。だからどうしても涼子に会って、殺してしまった涼子の心を取り戻してあげたかった。」
それはきっと
“当事者”
じゃないと分からない感情。
「俺が偉そうにこんな事言うのは間違ってるって思ってる。でも言わせてくれ。涼子に会って俺の事罵ってもらおうと思った。俺は最低な男だって。罵倒して、殴ってでも、石投げてでも、涼子の中にある憎しみを吐き出して欲しかった。あの時感じた恐怖だとか全部。そして俺がこんなつまらない、力だけ振り回して男である事を誇示しなきゃいけない、とるに足らない存在だったんだって涼子に感じて欲しかった。そうやって、あの時涼子が感じた絶望感を乗り越えて欲しいって。涼子の中に植え付けてしまった恐怖はもう過去の事だって思って欲しかった。男がみんな俺みたいに最低なヤツばっかじゃないし、結局本当に強いのは涼子自身の意志なんだって。涼子だけが、涼子の人生を決める事が出来るたった一人の人間なんだって。涼子に取り戻して欲しかった。」
彼は大きくため息をつき
「馬鹿だよな、俺って。でも、これ以外、償える方法、思い浮かばなかったんだよ。こんな風にしか、謝れないんだよ。」
そして訪再び沈黙が訪れた。彼は一度パンパンに膨らんでから空気が抜けた風船みたいにしなびてて。丸く小さくなった背中の中に見えた
“希望”
はあたしみたいに光に満ちた希望じゃなく。貧困に喘ぐ子供が木の根や泥を食べてでも生きている事に感謝する、そんな喜びのない希望だ。だから
「もう良いよ。」
うなだれている勝利を見下ろしながらそう言っていた。
「今のあたしはあんたとの事乗り越えて幸せだから。」
すると彼はぴくんと体動かして
「本当に?」
その恐る恐るの声に
「そうだよ。」
あたしは胸を張って答える。
「こんなあたしの事受け入れてくれる人を人生のパートナーに出来たんだから。」
それはまるで自分自身に言い聞かせている言葉の様だった。
「正直言ってあたしはあんたが想い描いていた様な完璧な女じゃない。ってか、むしろ勝利と中身は変わらない気がする。でもそんなあたしでも良いよって稔は言ってくれるから。あたしが繰り返して来た間違いを全部ひっくるめて愛してくれてる、優しくて寛大でパーフェクトな人だよ。」
そう、稔の価値は計り知れないから。するとこっちに顔を向けた彼の口元が
“嬉しい”
そうほころんで、少し垂れ気味の目元をもう少し弛めた。つられてあたしもほんの少し笑えて。
「あんたに煮え湯飲まされて、男なんて最低だって思ったけど、でも稔がそんなあたしの事救ってくれた。」
もちろん赤ちゃんも。
「だから幸せ。」
その言葉があたしの中で花を咲かせているみたいだった。
「あんたのおかげで今のあたしは最高に幸せ。」
例えそれが期限付きだっていっても、今のあたしの人生はキラキラに輝いてる。そんなあたしに
「俺、土下座して頭踏まれる覚悟もしていたのにな。」
なんて冗談とも本気ともつかない事を言いながら勝利はゆっくりと頭を上げ、あたし達は逸らす事なくお互いの目を見つめ合った。



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                      あとがき



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エイプリルフールの悪夢 R15 2

2 天罰は下る

 その昔、彼女はちょっと嫌みな女の子だった。
「あ~何だか分かる気がする。」
目の前で友達の詩音ががつがつと朝のブッフェを頬張りながら答えた。
「なによそれ。」
肝心の結衣は5杯目のグレープフルーツジュースを飲み干す。場所はホテルのダイニング。宿泊プランの朝ご飯が一人分浮いてしまったんで、愚痴を聞いてもらおうと同僚兼親友の詩音を呼び出した結衣だった。
「だって見るからにそんな感じじゃん?超ミニの制服に可愛い系メイクばっちりで
『あたしって女の子♡』
ってやってたんでしょう?」
「うっ!」
「男は3ヶ月ローテーションで、掛け持ちは当たり前。嫌いな女の子の彼をかっさらうのなんか朝飯前っつー。」
「何だか見てきた様な事言うわね。」
図星である。しかも罰ゲームで告って
『イエス』
を聞いた瞬間に捨てた男も数しれず。
「でも今は真面目だもん。」
「ははは。今更罰(ばち)当たった?」
彼女はスモークサーモン挟んだベーグルを頬張る友達を恨めしげに眺めた。
「誰がここの朝ご飯奢ってやってると思ってんのよ!税サ込み 3650 円だからね!」
「は~い、結衣様。今度あたしも何か奢るからね~。それにしてもここ最高!結衣も食べな♪」
皿の上にはカスタードたっぷりペストリー。
「今は無理。」
さすがに高い酒は二日酔いしない。だからって言って気分が冴えてる訳じゃない。
 思い起こせばここ数年。毎年エイプリルフールにはえらい目にあってきた結衣だった。去年はたまたま何も無くって、
『呪いが晴れた!』
って喜んでいたのに。
「はぁっ。」
6杯目のジュースを飲み干しながら頬杖ついた。
「やっぱ罰かな。」
なんて。彼女は6皿目に手をつけている詩音を尻目に独り言の様に話しを始めた。
 アレは高校2年の頃だった。彼女にはライバルがいた。名前?そんなの覚えていない。兎に角嫌な女。同じクラスでいつだって張り合って。結衣はどちらかって言うとナチュラルなリカちゃん系。彼女はイケてるジェニー系。似てる様で違うから。シェアだって微妙なライン、リカちゃんの一人勝ち。ふふふっ。負け越しのジェニーは
「だいたい小魚捕まえたって面白くないし~。」
って言い出した。
「私のお兄ちゃんみたいな極上の男捕まえられないんじゃ駄目っしょ。」
なんてね。
「だったらそいつ、連れてきな。堕としてやるから。」
宣戦布告。
「ふざけないで!!」
ジェニーは真っ赤になって怒り出し
「だれがあんたなんかに大事なお兄ちゃん餌食にさせるかよ!」
これで結衣はピンと来た。
『だったらそのお兄さんを堕としてやるもんね~。』
ほくそ笑む。ジェニー墓穴。そしてそのチャンスは意外な所でやって来た。
「あっ、ジェニー!」
夏休みに遊びに行っていたホテルのプールサイド、結衣の友達が彼女を発見したのだ。そしてその横には少し年上っぽいかなり雰囲気のいい男が笑ってて。
「アレ何?モデル?」
ひょろっとしているけどうっすら筋肉質。むだ毛も濃くないし、照れくさそうに笑う姿が何とも美味しそう。
「じゃ、行ってきま~す♪」
結衣は素早く獲物を見つけるとするすると近づいた。一緒に来ている今彼なんかどうでも良いって感じ。
「あれ~ジェニーじゃない?こんなとこで会うなんて奇遇ね~。で、この人だあれ?紹介してよ。」
逃げようとする彼女を上手い事捕まえ、
“極上お兄様”
のプロフィールを聞き出した。それはもうトリプルA。一流の私立高校、インターハイには2年連続水球で出場。なるほどの腹筋。しかも
「俺は競泳じゃ二流だったから水球やってただけだし。」
な謙虚さも抜群。その上今年の冬にはで某私立大学の医学部狙ってて。
「大樹(ひろき)さんって凄いですね!今度勉強教えて下さい!」
「ここには息抜きで来たの。結衣ちゃんの事面倒見る程お兄ちゃん暇無いの、ごめんね~。」
なんて可愛くかわそうとするジェニーを脇に置いて必至で売り込みかけた。そのかい有って
「あれ、君、妹の友達だったかな?」
偶然を装った学校前の待ち伏せで彼のアドレスを聞き出した。
「今年受験なんですね。頑張って下さい。」
そんな事言いながら。
「有り難う。君も頑張ってね。2年って言ったら一番勉強がキツくなる頃だしね。」
彼だって相当遊んでいる口だって思った。どう見たって女の子が放っておくタイプじゃない。だから適当に誘いかけたら気分転換とか言っちゃってカラオケ行ってキスぐらい朝メシ前だって。所がどっこい。彼は手さえ握らない。
『こんなんで良いのかよ、青春!』
心の中で愚痴りながら見た目よりもぐっと真面目な彼にくらって来てた。塾の合間にくれる
『今日はいい天気だったね』
なんて短いメールをずっと保存しておきたくって、彼以外のメールは片っ端から削除して。
「う~、ヤバいかも。」
って良いながら、彼に本気出し始めてた。データフォルダも隠し撮りの大樹で一杯。プチストーカー。
『あのね、受験終わったら告白させてね。』
それはクリスマス24日に送った決死のメール。届いたのは
『早く3月になりますように。』
って控えめなイエス。その日に向けて結衣は身辺整理してお小遣いも貯めて脱毛もした。それなのに。
「会えないのかぁ・・・。」
彼は忙しいって。1月に入った頃からやたらとテンション高いジェニーを尻目に結衣の方は下がる一方。そしてやっと会えた受験直後のプチデート。
「少し考えさせてくれないか。」
思わせぶりに微笑んだ、挙げ句に
「ゴメン、ジェニーから電話で呼び出されてしまってさ。行かなきゃ。」
そして日も長くなった土曜日の夕方、
「後でメールするから。」
の言葉と共に彼女は一人取り残されて。
「嘘~。酷いっす。」
それから後に友達と遊びに行く気にもなれず家に帰って部屋にこもった。結衣はもちろんこの時の大樹やジェニーの家族の事情なんかなんにも知らなくて、単純にふてくされていた。それから返事をくれない彼に
「なんだよ、結局あんたの方が遊びだったのかよ!!」
思わずぶち切れてしまった。だから
「ジェニー、あたしね、あんたのお兄さんに振られちゃったぁ。」
朝一の教室で彼女は大きな嘘をついた。
「大樹に告ったけどね、駄目だって。本命いるんだって。ここだけの話しって言われたけど、あんたの事嫌いだから教えちゃう。あいつ、妹のあんたが好きらしいよ。近親相姦ってヤツ?」
ふざけてただけだった。でも彼女は真っ青になって教室を飛び出しそれっきり。結末を聞かされたのは2週間後。ジェニーの友達が結衣を思いっきりひっぱたいたその時だ。
「あんたの所為で!」
って。彼女は自殺未遂して、両親の離婚が決定して、退学していた。
「あの子ね、本当にお兄さんの事好きだったんだよ。でも家族を壊すのが嫌だったから耐えてたんじゃん?何考えてんのよ、あんた。もう、最低!!!」
そんなつもりはなかったって、後の祭り。やっと決心して謝りに行った4月1日は丁度彼らの引っ越しの日だった。
「結衣ちゃん・・・。」
彼に見つかって、素早く腕を引きずられ近くの露地に連れ込まれた。
「今更何しに来たの?」
って。彼の目を見れずただ
「ご免なさい。」
繰り返し、
「君は良いよね、幸せで。」
その痛い声を聞いていた。
「そうやって可愛くかしこまっていれば何もかも許されるって思ってた?いい加減にしてくれないか。君は最低だ。」
って。
「違う。」
泣きながら首を振り、その仕草の全てが火に油を注ぐ様に彼の怒りを招いた。
「君のついた嘘で僕たちがどうなったか。一生忘れないで欲しいものだね。」
それが運命の4月1日。あの日以来、結衣は生き方を少し変えていて。その上振って沸いた様に不幸なことが起こる、それが4月1日の彼女のお約束になっていた。


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エイプリルフールの悪夢 R15 1


1 カウントダウン 1・2・3 !

 彼女は堅実だった。美人だけど出しゃばらず。スタイルが良くてもミニははかず。他のスタッフが嫌がる様な雑用もせっせとこなし、嫌な事が有ってもスマイル。つき合う相手も友達の彼氏の紹介。基本中身重視。だからといって上手くいくとは限らない。
 その日は雨。土砂降り。それでも待ち合わせのホテルのロビーは広々としていて快適。彼女はふっくらとした椅子に身を任せ彼が来るのを待っていた。なにしろ今日でつき合い始めて1年目。しかも
「物凄く大事な話しが有る。」
そう言われ指定されたのがこのホテル。半年前にオープンしてなかなか予約が取れないって評判の超有名セレブホテル、コンラット。ずいぶん前から予約していたに違いない。今晩何が有るのかちょっとドキドキ。
「プロポーズされたらどうしよう。」
本気で悩みそうになりながらその気持ちを押しとめた。仕事は始めてまだ2年。それでも上司に目をかけてもらい、来年度新入社員の教育担当に大抜擢されていたのだ。これからが面白い所。
「どうしようかな~。」
考えない様にしようって思いながら、でも頭の中は堂々巡り。
「結婚しても仕事はできるよね。」
なんて。今彼の事を死ぬ程好きって事じゃ無い。正直、そろそろ倦怠期?でも喧嘩するでもなくつき合っているし、婚活で気ぜわしくなるくらいだったらここらで手を打つってのも有りだよねって。
「平凡が一番。」
彼女は自分に言い聞かせた。自分がちょっとばかり美人だってのは知っている。でもそれに溺れて高望みなんかしたらえらい目に合う、分かってる。
「堅実が一番。」
結衣は持っていたバックを握りしめた。それから10分後
「待たせたかな?」
肝心の彼が現れる。結衣の友達は彼を
「100点満点中75点。」
と言う。ルックスもよく会社も一流。でもカリスマ性はまるで無し。みんなが選ぶ
“どちらかって言うと良いお友達”
実のところ初めて会った時彼女が彼に抱いた印象も似たり寄ったりで、それは今でも変わらない。その彼は結衣を見た瞬間
「綺麗だね。」
って言ってしまった。今日の彼女はピンクのワンピース。春色きらきら。綾瀬はるかに似た顔が微笑んでいて。だから彼は
『ちょっともったいないかも。』
って思った。そしてついつい
「レストランの予約までまだ1時間はあるから・・・・。」
なんて部屋に誘ってしまった。お部屋はエグゼプティブスイート。もちろん支払いは彼氏持ち。
 それから1時間と20分後。
「嘘でしょう!!!」
結衣はホテルの中にある星付きのチャイニーズレストランで手にしていたシャンペングラスを取り落としそうになった。
「な、ななな、なんで?どうして?」
ついさっきまでキスして
『凄く綺麗だ。』
って言われて、
『レストランに行く前には嫌だよ。』
そんな彼女を強引に押し切ってえっちしたって言うのに。
「どうして急に別れるなんていうの?」
男って分からない。
「仕方ないだろう。」
彼はさも申し訳無さそうに謝った。
「専務の娘が僕の事気にいってしまったって言うんだから。僕だって嫌だったよ、そりゃ。」
これ見よがしに深刻な表情。でも結衣は騙されなかった。
「嘘、そんなの。」
ってか、半分は本当な気がした。
“専務の娘が彼の事を気に入った”
件(くだり)はね。でも彼の目の奥には何か
“期待”
が煌めいていて、はは~んって思った。
『本心はさ、これで出世できるって思ったんだろ?え?』
なのである。
「じゃあ、本当に私と別れたい訳?」
女の子みたいにこくんと頷く彼。
「そっかぁ、じゃあ仕方がないか。」
結衣は何となくそう言ってしまった。こんな良いレストランで修羅場するのは恥ずかしいし、何かと冷静にならなきゃって思った。この1年、
“尽くした”
って思ってたから。彼を紹介してくれた友達(こっちはめでたく結婚した)に義理も有ったし、堅実そうな彼とだったら将来も上手くいく気がして頑張って。うつむく彼女に
「それじゃあ結衣も幸せになれよ。」
彼はいきなり立ち上がり
「え?」
見上げる彼女に手を振った。
「支払い、カードで済ましておくから。結衣は一人でゆっくりしていってよ。僕はこれから専務と打ち合わせがあるんだ。」
なんて。さも嬉しそうに微笑んだ。
「明日になったら4月1日だったから。こういう事って冗談じゃ済まされないし。」
「そ、そんな!待ってよ!!!」
慌てる彼女を尻目に彼は風の様に姿を消してしまって。
「なっ・・・・なんなのよ~~~!!!」
一目もはばからず彼女は叫んでいた。
「ふざけないでよ、こん畜生!!!」
当然レストランは追い出され
「お代は結構です。」
そんなありがたくも何ともない事を言われ
「ふざけないでよ!とってよ。もう、こうなったらぼったくってやってよ!!」
やり返す。
「どうしてもって言うんなら、部屋に料理運んで。二人分、食べてやる!ついでだから店で一番大きなフカヒレスープと蟹の爪のフライも追加して!」
それでも怒りは加速して
「ついでにぶっ高いワイン!」
って運ばせた1982年のボルドー17万円也。でも部屋に戻ると虚しくて。
「あの野郎~~~」
乱れたベッドに怒髪天だ。
「別れ話の直前にセックスするか。普通???男の馬鹿やろう~!!」
そのシーツを全部ひっぺがしベッドの上にジャンプした。
「こうなったら、飲んでやる!飲んで飲んで、忘れてやる~~~!!
そして飲み尽くしたワインに気持ち悪くなりながらボルビック開け、
「男なんか大嫌いだ~!」
叫んだ瞬間、ベッドサイドの時計が4月1日に変わった。


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LOVE & 俺女 R15 ご案内 ♪


      clover 俺女 clover

それは自分の事を  って言っちゃう女の子。

もしくは 俺様 な女の子。
  
かなり クール で 美形 な彼?彼女。

常識なんて Damn it ! ← 『くそくらえ』って言ってます♪

でも本当は ������ 可愛くって(多分)
物凄く �������P�[�L スゥィートガール な(はず)彼女達の
ボーイズライクな恋愛模様 ♪

オムニバススタイルでお贈りしたします。



       注意    BL でもなければ GL でもありません。
             カップリングはノーマルです。

       注意!!  R15 よろしくね



   onpu04  俺女 ストーリーズ ご案内  onpu04


1 st   秘恋 ~ 内緒の恋心 ~ 

     成り行き的に男の子の格好で高校に通う事になった松下綾花。
     大きな胸の上に超童顔。
     “秋葉キラー”と言われてもくじけません! 
     俺女な友達と天敵達に囲まれた
     ファイトなスクールライフ送ってます ♪


2 st   らぶめろでぃ・おん・ざ・ぱぁむ ~ 掌の恋音 ~

     泣く子が微笑むと言われる超!音楽家一族“白山ファミリー”のみそっかす
     白山小雪。コンプレックスは盛りだくさん。
     好きな人には想い人がいて、結局彼女は“弟分”?





 


      * 俺女 リンク *

今回の 俺女のお話を  お祭り ♪ にして盛り上げている皆様です。
皆さん作風の違う俺女が活躍しています ♡


♀  50/50 ~勝負の行方~  ♀   作者 水城麻衣様

 自分が女であることにどこか劣等感を持つ、ハイパーなキャリアウーマンと
 デカイ同僚男子のある一日。ベッタベタな中篇の予定です。
   



       俺女企画 にご参加されたい方、随時募集中 ♪
              ご連絡は  →  こちら
   

  企画発起人  綾部叶多 様 


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1 私の男

 昔から
『涼子は顔が濃い』
と言われた。                    
『大げさな顔だね』
って。別に好きでこんな顔になったんじゃない。
「で?それがなんだって言うの?あなたはさっぱりさんねって、言って欲しいわけ?」
って切り返してやると、だいたいがいやな顔するけどさ、でもね、言っとくよ。最初に仕掛けてくるの、向こうだから。
 神田うのと押切もえちゃんを足して2で割った顔。そう言われて褒められているって思える方がどうかしていると思う。誰に聞いても第一印象は
『気が強うそう』
挙げ句に
『人の男盗ったことあるよね?』
とか
『女王様』
だったりして。嫌になる。それって、タダの顔見知りに言う言葉かなぁ。
 あまり太っていなくてどちらかって言うと細身な事も災いしているのかもしんないけど。
 性格を勝手に決められるのが大嫌い。外見と私の中身は関係がないって言うのに。それでもあたしはいい人だから、そんな周りの期待に応えて演技してやるけどさ。
 こう見えて、嫌われ者ってなかなか良いものよ。だって自分の言いたい事、言えるんだからね。
「あんた、馬鹿じゃないの?こんな領収書で経理通せる思ってんの?」
なんてね。おかげであたしの所に伝票持ってくるヤツはクリーンなヤツばっかで、そいつらには優しくしてやるし。それに仕事に関しては信頼もらってるから。楽と言えば楽だ。
 身長も少し高めだから、普通の人の膝丈がミニになる。子供の頃に新体操をやっていたおかげで10cmのヒールなんかちょろい。馬鹿な男は女はブランドものを送れば喜ぶって信じているから、小物で不自由もしない。

 でも本当のあたしは違う。みんなが望んでいる私は作り物だ。カフェとか言うものよりも定食屋の方が美味しいって思うし、日本茶と煎餅はいつでも冷蔵庫に入っている。手焼きの醤油煎餅をばりばり食べるのが最高に好き。休日は出歩くより家でのんびりしているし、ジャージ着て香港系のギャグ映画で笑ったり、近くの豆腐屋にタッパー持って買い物にも行く。ネイルアートも少しぐらいはするけれど、糠床を手入れしていてビーズが落ちてからは少し懲りていた。お化粧は大好きだけど、ケバく見えない為の技術磨いているって感じ。服を買いに行くのもセンスに自信がないから、いつも友達に選んでもらってそれを買っている。
 今までで一番大切な人はおばぁちゃんだ。そのそのおばぁちゃんが去年天国に行ってしまって。それから私は少し変わってしまった。何だか虚しくて、今を凌いで生きていかなきゃって思える様になってしまって。
 だからやり友を作った。
 後腐れのない男。そこそこ真面目で、会社の信頼が厚くて裏切れず。彼女持ちで本当はあたしみたいな感じの女とは本気でつき合わないだろうなって、そんな男。彼には守りたい物が有るから、深みにははまったりしない。二人とも。

 隔週の金曜の夜。彼は遠恋だから彼女持ちなのに週末はぼちぼちで空いているらしく、昼休み、メールが届く。
『今晩一緒に飯食わない?』
なんて。だいたいこういう夜はそれぞれの同僚と飲んだりする。それからさよならして、合流。だから本当は一緒にご飯なんか取らない。まぁ、同じ会社同士だしお互いの付き合いが重なっているからこういう関係になったわけで。それでも彼のメールが言いたいのは
『今晩セックス出来そうか。』
って事。
 男ってのは溜まるらしい。
 月に2回ってペース。その度に
『男ってこういう生き物何だぁ。』
って思い知らされるあたしがいる。
 馴染みのホテルは道玄坂の外れ。ちょい寂れ気味で、人通りが少なく。御泊まりが0時からというしょぼさに、ポイントカード付き。部屋は手狭で、全てが壁より。時々ベッドの横の機械が壊れていて情けなくなるときが有る。それでも清潔な事だけは取り柄だった。
 最初にあたしがシャワーを浴びる。その間、彼は手前のコンビニで買って来たビールを飲んで。
 二人とも贅沢できる身分じゃないから、ホテルの1缶500円のビールなんてやってられない。でもそれよりも。飲まなきゃ抱けない男って何だよって思う。
 勝手知ったる仲だし、メイクを落とさないで寝るとひどい事になるって事は25過ぎて身にしみていて。すっかり身ぎれいになったあたしの後に彼がやってくるのがいつものパターン。ビール、飲み干してから。
 この関係も1年を過ぎ。マンネリで。それでも楽しくやっていた。人ってコレで結構単調ってのが好きなのかもしれない。
 狭いバスタブに泡立ちの悪いバブルバス。擦るとちぎれる虚弱なスポンジにポンプでソープ垂らし。二人で垢を擦り合う。世俗の垢ってヤツね。
 彼の体はキレイ。ガテンじゃないけど、そんな感じ。それだけでも良いやって。自分が肌合わせる男が良い躯していたら、ちっとはすくわれる気分になる。そうでしょう?



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2 シャンプー

 どこもそうだと思うけど、ラブホの照明は薄暗くって。それにこの時のあたしはコンタクト外しているし。
 見たい訳じゃない。彼がどんな表情をいているかだなんて。えろく笑っているのかもしれない。ぼんやりしているかもしれない。見ない方が良い事って、有るからね。
 いつもの彼は真面目そうにはにかんだ笑い方をする。妻夫木君をでかくした、そんな感じ。それは彼の性格そのもので。いい人だよねって誰もが思っちゃうその表情。だからきっと今の彼は眉間にしわを寄せ、堪えてる。あたしとのこのうっとおしいこの関係を。こんな女相手にちんぽ経たせて、入れられずにいられないでいるこんな関係を。
 あたしは石けんで滑る(ぬめる)感触が好きだ。特におっぱい。たっぷりの泡を乗せ、擦り合わせて。
「ふうっ。」
気持ちよくって自然に声が出てしまう。だってコレは行きずりじゃない。彼は心得ているから病気をうつされる心配もないし、あたしとこんな事をしている割には口も堅く、とにかく安全だったから。そう、あたしは安全な男を選んだのだ。だから安心してえっちができた。彼はふざけてシテる写真を撮ったりなんかしないし、生でやらせろなんて言わない。会社でイタズラかけてくる事もなければ、あたしをモノみたいに扱う事もない。
 そんな満足に口元に笑みが浮かんじゃう。それを、馬鹿だぁって思いながら彼の背中に手を回す。爪を立てるのは御法度。暗黙のルール。スポンジ使って彼を撫でるフリで躯を擦り付ける。見た目より大きいおっぱいがくしゃんと潰れ、形を変えながら円を描く。バスタブに立ったままくちゃくちゃしていると、かれのアソコがあからさまに大きくなってコツン、コツンって当たって来る。最初の頃は堅くなったアソコを恥ずかしそうに腰を引いて隠していた彼だけど、今じゃぁこれ見よがしに押し付けて来る様になっていて。あたしの腰にその指を置いて引き寄せると、わざと上を向かせた先端とで柔らかいその下の部分があたしのお腹に当たる様に下から突き上げる様にあたしの腰をいじる。どくどくと波打つ固まりと、あたしのおっぱいよりも柔らかい袋がフルフル揺れてぴたんっ、ぴたんって音を立てる。その甘いんだか辛いんだか分かんない感触に酔いそうになる。
 それから、キス。いやな話しだけど、ヘビースモーカーの口臭は嫌いだ。その点彼は合格。軽いミントの香り、少しピリってするその味に、
『ケアしてるんだぁ。』
って。何だか気を使ってもらっている、というか、大切にされている気がする。
 ただのヤリ友なのに。
 ついばむ様なキス。彼の手が滑り、あたしの背中を撫で上げる。あたしは腕を彼の首に絡め引き寄せる。その高さは丁度上を向いた所で降りて来て。目を閉じて彼を迎えると、少し堅い舌先があたしの唇の輪郭をなぞる。
 あたしは自分の顔が嫌いだ。厚すぎる唇が
『えろい』
って言われるのが大嫌いだ。第一、セックスが嫌いなあたしだったから、そんな事言われてもちっとも嬉しくなんかなかった。でも、彼だけは違う。敏感になっている内側に彼が滑り込み、引き戻され、一番柔らかい所を撫でていく。その動きはスローモーションみたいにゆっくりで、
『早く、早くっ』
ってあたしの女が疼き出す。自然に開く口元で、奥に彼が欲しいんだって誘い込む。くちゅり。粘膜と粘膜が濡れ合って解け合って。べっとりとした糸を引き。くちゅり、くちゅり。そこから熱を帯び、欲望が膨れ上がる。躯にたっぷりとなすり付けていたはずの泡はすっかり落ちて、すべすべとした感触だけが残っていた。
 彼がバスタブに腰をかけシャワーヘッドを取った。それは合図の1つだ。あたしはためらわずしゃがみ込み、正座の形で少し前にのめる。彼に向かって。ざぁざぁってシャワーの流れる音。それから肩にかかって来る温水。
「熱く、ない?」
「ん。」
頷いて、彼の背中側にあるボディソープに手を伸ばした。ぷるんっておっぱいが彼の事かすめ、たっぷり堅くなっているはずのそれがぴくんって跳ねたのが嬉しい。だからその先端が彼の横側を伝う様にそっと躯を動かしながら石けんを掌に落とした。
「熱くないよ。」
そう言いながら。
 彼の長くてキレイな指があたしの髪を梳く。丁寧に、丁寧に。一本も余さずキレイに後ろに撫で付けて、それから額に向けて緩やかなシャワーが降って来る。その水の流れをうっとりと感じながら、あたしは掌の石けんを泡立てる。丁度目の前まで持ち上げ、彼の濡れた茂みの上に落とす様にたっぷりと。
 彼が前にかがむから、あたしの顔は余計に彼に近づいて。でも彼の指があたしの頭にかかっていて、半開きの口元のまま上を向かされている。全てがお約束通り。やがて彼はあたしが持って来ているスペシャルなシャンプーを取り出し、それで髪を洗ってくれるのだ。
「気持ち良い。」
彼の指先が柔らかく動き、長い髪の毛がソフトクリームみたいにフワフワと持ち上がる。その心地よさを伝えたくって、あたしは指先を動かした。彼がしてくれているみたいに、優しく、刺激的に。たっぷりの泡に埋もれながら、その芯まで確実に届く様に。
 もしかしたら彼は他の人より大きいのかもしれない。こう見えてあたしは男の経験が少なかった。だから、大きいだとか小さいだとか、早いだとか遅いだとか。みんなが話題にするほど詳しくはないのだ。ただ、今までしゃぶった事のあるおちんちんの中では、奥まで入れたら絶対死んでしまうサイズだって事だけは分かっている。
 その大きくなっている肉の棒をあたしは丁寧にしごいた。よく目が見えないからしっかり顔を近づけて、微妙に寄っているしわを指先で優しく伸ばしてあげる。昔の男が阿呆みたいに敏感で、少しでも爪をたてようものなら悲鳴を上げてたのを覚えていて。何だかそれって間抜けだよなって思いながら、彼を相手に興が醒める事はしたくなかった。時々、彼のちんちんは臭い。というか、男はみんなそうだ。いくら清潔にしていても、どこか汗臭かったり、しっこの匂いがする。酷い時にはしっかりと剥いてあげた皮の隙間に白い汚れが溜まっている時もある。あたしはその汚れをキレイに落としてあげるんだ。真っ白い泡と安っぽい柑橘系の香りと細い指先を使って。
 ふと彼の手があたしの頭を離れる。
「流すよ。」
って。それからもう一度あたしの顔を上に向かせ、生え際からゆっくりとシャワーをかけてくれる。
「勝利(かつとし)って、上手だよね。」
美容師にでもなれるんじゃないかってテクニックであたしの髪を流していく。
「まぁね。」
彼は低く笑った。さらさらと伝って流れる水の所為で彼の下半身の泡も見る見るうちに姿を消して。
 ちろり。あたしはその先端を舐める。
「苦い。」
少し石けんが残っていて。
「ゴメン。」
彼がシャワーを少し強くした。手の腹を使ってしっかり洗った後、
「んっ・・・・・。」
あたしはその先端を口に含む。それからちゅぱり、って音を立て、唇を放し彼を見上げた。だからって彼の表情は見えないけれど。えろいって言われるあたしの、一番えろそうな顔を見て欲しかった。
「続けて。」
そんな甘える様な、懇願する様な情けない声を聞きながら、あたしは舌の先をゆっくりと回した。




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3 トリートメント

 10本の指が髪を梳く。あたしはその動きを邪魔しない様に、両手を彼に添えて支えならその先に軽いキスを繰り返す。
 あたしの髪は1つに束ねられ、根元の所でくるくるとまとめられると大きな手の平でじんわりと絞られる。
『優しくして。』
彼は一度言われた事を忘れない。後れ髪を指先に巻き付け手の甲で撫で上げられて。それからパタンと降ろされる。
 いつものトリートメントの香りが漂い、両手の擦り合わさる音。あたしは彼のくびれを持ってその先を眺めた。躯の方向に皮を少し引っ張ると、その先端の穴が口の様に横に開くから。
「面白い。」
ただの丸じゃないんだよね。
「馬鹿。」
彼が笑い、トリートメントが擦り付けられる。
「んふふ。」
その先にキスをした。なんだかぬいぐるみにキスしている気分だよね、こういうのって。チンポだって分かっているけど、彼のは少し違う。どうしてだろう。他の男のものをしゃぶるのは大嫌いだった。フェラチオラブな女って変だと思っていたけど、それは相手によるって事だって後から分かった。勝利はキレイ。それに不味くない。何よりも文句を言わないから。
『奥までしゃぶって』
とか
『もっと早く』
とか。酷いヤツになると頭押さえつけるから。でも、勝利はそんな事しない。あたしの好きに任せてくれる。そこが好き。
 くびれまでくわえて、引き放す。くびれまでくわえては引き放す。そんな事を数回していると、彼の棒がぴくん、ぴくんって揺れ始める。感じてるんだなぁつて思うと、無性に嬉しい。あたしって、馬鹿かも。
 彼の両手はあたしの頭の上。撫でる様に地肌をマッサージしてくれて。なんて気持ち良いんだろう。目を閉じながら軽く頭を揺すってみる。ほんの少しの抵抗が刺激的。もっと奥まで。
「んんっっ。」
奥まで届く様に。くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。彼のチンポとあたしの髪の毛。勝利は今どんな顔してるの?気持ちいいの?
 どこかでシャワーの音。気にしない。緩やかに降って来る水の中。あたしはストロークを繰り返す。前後の動きに合わせ、彼は器用にトリートメントを流してくれる。
「これ、新しいの?」
彼が不思議そうに聞いて来た。チュパって音を立ててそれを口から放し
「そうよ。」
って説明してあげる。彼の掌には真新しい黄色い入れ物。ヘアパックだ。
「マンゴーが入っていて、マンゴーの味もするんだって。ちょっと貸して。」
それを受け取りキャップを開ける。漂う甘い香り。
「こうやって。」
それを指先に取り、小さくすりあわせ彼の茂みにそっと擦り付けた。
「こんな感じ。」
一本一本に擦り込む様に。両手の指の腹を優しく立てて、ジョリジョリって音をたてながら。
「どれぐらい?」
すくう量を見せられて
「たっぷり。」
って答える。
「もっと。」
彼はその2倍ぐらいを取って掌に落とした。
「そんな感じ。」
見上げて教えてあげる。
「5分はそのままね。」
って。行き渡るヘアパック。全部がつけられたって感じてからあたしは動き出した。あたしの人差し指達は茂みの中で、親指はその後ろに回っている。
「本当にマンゴーの味がする!」
思わず笑いながら舌先ですくってみる。
「舐めても大丈夫なのかよ。」
心配そうな声。彼らしい。
「大丈夫って、書いて有ったよ。天然素材なんだって。」
しゃぶってあげたいって思っていても、何だか笑いが止まらなくって。仕方が無いから唇を横に滑らせた。それでも口の端が笑ってしまい、こうなったらって、前歯が少し当たる様にしごいた。彼が呻く。
「怖い?」
それでもあたしは止めない。だって、彼の手も止まっていないから。大きな手。あたしの髪をまとめては撫で上げ、指先を頭皮に滑らせて。
 横を向くあたしの耳元を撫でる中指。そして薬指。
「反対も。」
そう言われ向きを変え。
 彼は本当に気持ちいい。だからそのお礼。あたしは大きく口を開いて、彼を吼わえ込んだ。彼の左手はこめかみの辺を柔らかく押してくれ、右手は支える様に首筋をマッサージしてくれる。
「んっ、んっ。」
あたしは夢中だ。両方の掌にタマを落とし、その冷たさを気持ちいいかもって感じながらぎりぎりいっぱいまで入れ込んで、少ししか動けない舌を揺する。
 こんな時、彼の方が冷静だ。
 多分、ぴったりで5分。それから再びシャワーであたしの事を流す。暖められた空気にトロピカルフルーツの香り。
『二人でどこかに行きたいよ。』
そんな言葉をあたしは飲み込んだ。だって二人は“ヤリ友”で。恋人同士なんかじゃない。
 諦めたあたしは唇を放しうつむいた。
「もう少し、下向いて。」
生え際もキレイに流されて。
「終わったよ。」
その両手で私は引き上げられた。
「ありがとう。勝利って本当に上手だよね。」
まだぼんやりと開いた唇のまま彼に引き寄せられ、その中に向かって彼が何か囁いた。ほんの小さな声で、あたしには聞こえなかったけど。そしてその隙間に彼の舌が滑り込む。
「本当にマンゴーだ。」
不意に勝利が笑った。
「そうでしょう?」
やっぱりマンゴーの味はなんだかおかしいよ。



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4 ボディケア

 ごわごわのタオル。でも彼はぽんぽんと叩く様に拭いてくれるからそんな痛くない。それから髪の毛を包んでもう一度ゆっくりマッサージしてくれる。ぽたぽたと垂れる雫を拭く事も忘れない。お返しにあたしはタオルを広げ彼の胸に当て自分の体を押し付ける。多分こうしたら気持ちいいだろうなって思うから。
 お風呂から上がった後もあたしはやる事が有る。ドライヤーだ。これから汗かくって分かっててもこれは絶対だ。
 ぶ~んって、安物だから強すぎる温風が嫌になる。本当はイオンが良いんだけど、持ってくるのは冗談じゃない。この時だけは猫っ毛で良かったと思う。剛毛だったら遠く離したドライヤーじゃ乾きづらいから。
 そして彼は自分の準備をする。でも、半分だけ。2回目の時にそれをする彼に唖然としたものだ。そんなの初めてだったから。
「お前が我慢すりゃ良いじゃん。」
なんて生意気な口を聞くから、つい成り行きでそれを許してしまい今まで来てしまったけど。最後の瞬間、後悔してしまう事が時々。
 彼が戻って来て、付けて来たのが分かる。
 鏡越しに目線が有った気がした。
 すぐ目につく所に、ボディローションを置いていて。彼がそれに気づいて手に取った。中身はスクワランオイルとローズエッセンス。それから、秘密。でも怪しいものじゃないよ。あたしはあたしなりに肌にいいものをブレンドしているだけだから。
 彼はあたしの真後ろに立って、そのさらさらしたオイルをたっぷりと手に取る。その手をあたしの肩から背中へと滑らせる。
 まるで執事がご主人様に仕えているみたいに、あたしは御手入れを受ける。でもこの執事はえろ執事だ。べたべたの手はやがてあたしの前に回り、お腹からせり上がり、その上へとやって来る。両手が同じように動きながら谷間に入り下からおっぱいを支え持ち上げる様に動きながらオイルを擦り込んでいく。
「んっ・・・・」
そのタッチはかなり軽い。
「気持ちいい?」
彼が囁くのは右の耳。
「うん、好いよ。」
もう一度垂らされたオイル。あたしの肩に顎を乗せ、彼は覗き込みながら、こねる。それから指先を使って摘む様に先端にも擦り込んで。目の前でピンクだった先っぽが堅くなり、頂点って感じにせり上がる。彼は一度手を下し、その爪先でみぞおちあたりをやわやわと引っ掻いて。
「あんっ。」
あたしはそれに弱い。その手がもう一度上がって来て。堅くなっていたはずの頂点がピンクに戻っていて、その周りに指先をたててくるくる回し。もう一度堅くなる、ゆっくりと。
「好いっ。」
それが大好き。彼の手の中でオイルがくちゃくちゃなっていて、あたしのおっぱいは油で光っていた。
 こうなるとドライヤーはお終いだ。あたしは両手をカウンターについてうつむいた。彼はしゃがみ込み、くるぶしをつかみその手を滑らせ、焦らす様にオイルを塗っていく。何しろこれはあたしが言い出した事。
「ボディケアしたいから、よろしくね。」
って。体中オイルでべたべたなんて絶対家では出来ないから。でも全身のオイルパックは効果はあるって聞いていて。何となくノリでお願いしたんだけど、お互いそれにハマってしまっているのが現実。だから
「早く・・・。」
あたしは先を急いだ。
 追加されるオイル。丸められた掌にたっぷり乗せられ、それがあたしの目の前を通り、下へと降りていく。
「んんっ!!」
茂みに擦り付けられたそれは、とろとろと中心にむかって落ちて行く。くちゅり。彼の指先は奥へと進み
「濡れてる。」
って囁いた。
「オイルよりべとべとじゃん。」
って、知ってる。誰より自分の体だから。あたしは何も答えずお尻を振った。彼は右利きで、あたしをいじるのはいつも右手でいじる。それから左手はおっぱいだ。どちらかって言うと右のおっぱいの方が感じやすいあたしとしては少し物足りないけれど、その分彼の右手はいやらしい。
 オイルを垂らしながら擦り込んで。ただでさえ滑っているあたしのアソコのぬめりを、周り全体に押し広がる。
 外側の左右の厚い所を右だけ指で摘んで前と後ろにしごいてみせて。
「ここも手入れしないとな。」
なんて、左側も嬲られる。そう、外側からだ。だから次はもうひとつ内側。二本入れられた指先が、あたしの事を右と左にかき分ける。後ろから、前に。最後、指先がそこに有る敏感な御豆ちゃんを挟む様に滑り、そこにだけオイルをもう一度なすり付け。
「乾いてると痛いからな。」
なんて分かった様な事を言われ。
 乾いてなんかいないよ。お汁がたれそうなのに。
「丁寧にしてやるよ。」
なんて声をかけられ
「お願い。」
御ねだりしてしまう。とぷりと浸かった指先が、前の方へ滑る。内側の壁を擦りながら、大きな襞の横に出来た溝を通り、あたしの女を押し広げるみたいに動きながら、頂点まで。くちゃくちゃなっているのがオイルなのか、それともあたしのジュースなのか、分かんない。
 しゃがみ込む彼にあたしはお尻を突き出した。大きな両手がお尻を包み、親指が肛門の辺りにかかるから少し怖くって
「そこは駄目。」
って言っちゃうのが癖になっている。
「大丈夫だよ。」
何がどう大丈夫なのか分かんないけど、勝利を信じるしか無い。そこはあたしの見えない場所。多分親指が菊の花の周りにオイルを擦り込み、それから生暖かいものが肌を這う。その先端はちろちろと真ん中を突く。まるでそうしたらそこが開くとでも思っているみたいに。
「嫌。」
そう言いながら、あたしはずきずき昇って来る快感に酔いしれそうになる。そこは駄目。あたしはバックバージンなんだって。嫌々をしながら、代わりに他の所を埋めて欲しいって思ってる。彼の舌が微妙に中に差し込まれる。
「ひっ!」
あたしは思わずお尻引き締め、彼の顔を軽く挟む。
「意地悪。」
そう言いながら、感じるから。踵をそっとあげ、あたしの女に力を入れた。彼の両手があたしを広げる。きっとそこはいやらしく腫上がってるんだ。その事を考えただけで、中が充血し、太ももを何かが伝わって落ちた。
 こんなあたしだけど、淫乱じゃないよ。だって本当はセックスなんて嫌いだったから。



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5 セックスレスな女

 今までの男がヘタレだっただけかもしれないけど。あたしは勝利とスルまでの25年間、一度もイケなかった。正確には中で。
 外側はいじられれば何とかなったけど、それ以外は何だかなってのが本音で。正直、セックスなんて全然良くなかった。歴は5人。多くもなく少なくもなく平均なあたし。そしてこの前読んだ雑誌に書いてあったのは女の半分は中でイケないって事。納得した。
 今までそれなりに好きな男もいたから、肌合わせるのが気持ち良いってのはよく分る。でも、一番好いのはキスまでの道のりってヤツだ。その時まではドキドキできるからね。
 あたしは見た目が派手だから、つり上げる男も始めっからそのつもりのヤツが多くって、結局ときめきもすっ飛ばして最短ルート突っ走る事になる。別に躯目当ての男とつき合ってるつもりは無くったって、所詮男なんてヤリたい動物だから、しかたないっちゃぁ、しかたない。でもね、分かれ道ってのが有って。そのまんま、テキトーに好きな男に、“食わせときゃ”なんとななるか、みたいな感じで行くか、マジ好きな男にだけその時だけは“我慢してヤル”かって。つまり、惰性でつき合うか、本気オンリーで行くか。
 さっきも言ったけど、あたしはセックスが嫌いだ。っていうか、嫌いだった。男は出しゃいいけど、女はそうはいかない。簡単に気持ちよくなんかならないし、乗らないとむしろ痛い。それに演技している自分は疲れる。だから嫌いな事、無理してするんだったら、とことん我慢できる相手の方が良いかなって。だから後の方を選んだつもりのこの3年はマジ日照っていた。カンカン照りで、本当に仲のいい友達には
『砂漠女』
って呼ばれる位干上がってた。
 でも全てがタイミング。
 たまたま勝利が6人目の男になって、あたしは変わったんだと思う。
 だいたい自分のテクニックに自信の有る男は外れが多いって友達はこぼしていた。不細工な方が学んでるから以外といけるって。彼は不細工じゃない。ただ、真面目すぎ。多分あたし以前に寝た事のある子はみんな本命だったんだと思う。彼のえっちは尽くすえっちだ。それがあたしには効いた。大事にされるって最高だって思った。
 勝利は急がない。焦らない。あたしが濡れるまでじっと待っててくれる。彼が完全に中に入ってくるまで最低一回は感じさせてくれ。あたしに何かをさせる事は1つもなくて、そのくせやってあげる事は拒まない。
 彼には大阪本社時代の恋人がいるって噂で聞いていた。遠恋してるって。大阪と東京は近くない。たまに出張で月1ペースで戻ってる事も知っている。でも残りの28日はこっちだ。あたしは現地妻。寂しい彼がぬくもり欲しさに抱く女。勝利はあたしの向こうに彼女を見ているんだなって思う時がある。彼はあたしとしていて気持ち良さそうだけど、でも時々苦い顔をする。何だか現実戻って、何でこんな女抱いてるんだろう。そんな感じ。

 彼はヤリ友持つ様な男じゃない。きっと良心ってのが疼いてんだと思う。だからほんの少し悪い気もする。でも彼は淡白でも男じゃない。むしろ好き者。
 週末の安ホテルで3回は抜いてるから。そもそも休憩じゃない、お泊まりだ。あたし達はたっぷりと絡んで濃い時間を過ごす。

 躯をしならせ、腰をそらしながらあたしはいやらしいポーズで彼を挑発した。もう潤ってるから、頂戴って。躯を起こした彼と鏡越しに視線を合わせる。はっきりとは分からないけど、勝利はあたしに夢中だ。目を閉じ、つま先立ちになりながら彼を待つ。彼が膝を曲げる気配。
「んっ・・・・」
先っぽだけ。それ以上はくれない。あたしの前の壁めがけてこつんこつんって当たる所で彼は腰を落としている。それから前に回された指先があたしを掻き分けて・・・・。
「くうっ!」
あたしは奥歯をかんだ。彼はまっすぐ入っている訳じゃない。だから栓がされているのとは違うから。とぷりとぷりと隙間を伝っておつゆが溢れる。そのおつゆを擦り付けるみたいに彼の指だけが動いていた。
 初めてこれをされた時、バックで突かれるんだと思った。でも、そうじゃない。彼は先っぽだけであたしを焦らし、どうしようもないほど男が欲しいってとこまで嬲るんだ。
「奥、入れて。」
っておねだりしても
「根元まで付けてないから。」
そんな事言われ。入り口の所で微妙に感じる引っかかりがそれ以上入れたらヤバいってあたしに警告する。ゴムの先だけ中に残るなんて最低だから絶対に駄目駄目だよって。でもその残りの8センチがあたしは欲しい。でもここで動いちゃいけない。下手にお尻を勧めようものなら角度の変わった彼がこぼれ落ちてしまうから。
「意地悪!」
責めても
「動くなよ。」
なんて言われ、もう一度。浅い挿入と器用に動く右手の先。あたしの下半身はくちゅくちゅと泣きながらひくひくと動く。彼がいじるのはお豆ちゃんだけじゃない。二本の指先がVの字であたしの外側を撫でていく。彼のペニス脇を通って、前へ後ろへ。それからクリよりもう少し上、前の内壁の丁度外側を優しく円を掻く様に刺激し始める。ほんの少しのお肉を通し、その向こうには彼の肉塊。あたしはそれをじんじん感じながら我慢しなきゃいけない。
 勝利はあたしの躯を熟知していて。
「ひいっ!」
こんな時、おっぱいをもまれるとと弱い事もよく分ってる。乳首から中央まで一気に電撃が走って、あたしのあそこはびくびくと震え出す。
「だめぇ。」
それが好いって事、彼が知らないはず無くて。
「イケよ。」
そう言いながら指の力を強める。その裏側はGスポット。
「ぅふううっ・・・・!」
あたしは感じるのが怖くって、必死になって抵抗する。でも、抵抗して抗えば抗う事快感も強い事を知っていて。ぎりぎりまで
「だめっ!だめっ!」
って言い聞かせ、肉襞を振るわせた。
「ひいっ!!」
あたしの内側は弾け、その勢いで彼を押し出し、飛沫を上げる。びちゃびちゃと水の音。上半身支えている腕が振るえ、腰が抜けそうになりながら・・・・。ドロドロに融けたあたしの内側に彼の指が滑り込む。最後の仕上げって感じで。
「ほら。」
だらだらと垂れるあたし。膨れ上がったお豆ちゃん。さっきイッたのはG。それから・・・・。
「もう一回。」
彼はあたしの先っぽを刺激する。きっと赤く膨れ上がって、アコヤガイみたいなあそこ。1回中でイッていて感じやすくなってるあたしのあそこ。
「んんんっ!!」
あたしは息を殺し、下のお腹に力を入れた。もう、待つ事なんか出来なくて。こうすれば充血しているあそこにもっと力が入ってイキ易くなるって、あたしの躯は知っている。
 大きく仰け反りながらあたしは何かを叫んでいた。
 今度と言う今度は腰が落ち、諤々と震えながら冷たい床に水たまりを作った。
「あぁっぁぁ・・・・ああぁあっ。」
って自分でも分かんない音出しながら。
 パチンって音で、彼が今まで付けてたコンドームを外した、その事だけは分かった。



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6 奴隷

 このラインを越えた瞬間、あたしは勝利の奴隷だって思ってる。くたくたになった躯を引きずられ、ようやっとの思いでベッドまでたどり着き。
 外側でイクのは刺激が強くって。いじられすぎると痛いし、そこだけで連続していくと後でキツい。でも、彼は違う。あたしは彼の優しい仮面の下で調教され、中でイクことを覚えさせられていた。
 小さく痙攣の残るあたしはすぐに動く事が出来ない。そこを彼が捕まえる。大きく開かれた足の中央に、厚い舌。
 ずるずると音を立てながらあたしを舐め上げ、あたしの内側を探る。
『汚い。』
って昔は言ってた。でも今は違う。彼の舌があたしの内側の充血を探ってる。彼はあたしが一番美味しい状態になるのを待っている。肉の柔らかさと汁の滴り具合。ぱっつんぱっつんになるまで血が行き渡り、彼が入って来た瞬間、膨らんだ風船が彼を押しつぶすかの様に締める様。
 だから力込めてあそこをびくつかせた。
『美味しいから、食べて。』
その勢いで、膣の奥に溜まっていたジュースがこぼれ出す。
「んっ!」
粘液がお尻まで伝う。その先を彼の指がかりかりと追う。
「意地悪。」
あたしは必死で体を起こした。
「早く!」
手を出して彼からゴムの入れ物を受け取った。
 彼はホテルのゴムを使わない。初めての時はさすがに使ったけど、それから後は彼自身が新しいものを買って用意してくれている。
『ホテルのはイタズラされてる時が有るって。友人から教わっててさ。』
習慣らしい。それ聞いただけで
『彼女さん、愛されてるなぁ。』
って思って悲しくなったけど、あたしはそんな事、忘れる事にした。だって今勝利が抱いているのは、あたしだから。
 彼の手はあたしのボディオイルで滑るから。上手く付けられない彼を笑い付けてあげた。それ以来ゴムはあたしが付けている。
 これもあたし達のお約束。あたしの奥に入れる時にはあたしが最後までゴムを付ける事。ほらね、かなり安心な男でしょう?彼は生のままあたしの中に入ろうなんて、絶対にしないんだから。
 彼はベッドの上で向きを変え、両手を後ろに付いて足を広げ少し膝を曲げた。あたしがやりやすい様に。
「ありがとう。」
あたしは喉の奥で笑った。それから頭を下げ、彼を掌に取った。少し、滑る。このぬめりは、あたしだ。
「そう言えば。」
ちょっと思い出した事が有った。
「言ったっけ?あたしさ、男に付けてあげるの勝利が初めてなんだよね。」
あの時はこんなに付けにくいものだって思わなかった。やりづらそうな彼を見て、手についたオイルの所為なのは分かってたから代わってあげたんだけど。
 それまであたしに背を向けてゴム付ける男の背中って何だか格好悪って思ってた。丸まった背中に、しこしこって感じで。だからって付けずにさせた事は無いけどさ。どうせもともと
『したい!!』
って思ってんのはあっちだし。あたしは躯でつなぎ止めなきゃいけない様な男とつき合った事無いから、付けるの嫌がる男とは即バックってヤツだった。
『ご免ね~、あたしの友達この前失敗ちゃってさぁ。むちゃ大変だったらしぃよぉ。だからあたしはまだ妊娠したくないなぁ。え?まさかあたしに産めとか言わないよね?』
そんなんでオッケーで。だからそれでもしたい男は焦って自分で付けていた。
 だから初めて勝利に付けてあげた時、全然上手くいかなくっていらついた。簡単にすぽっ、ずるってな感じだと思っていたのに。
「あんた、でかすぎなんじゃないの?」
って笑いとってみて誤摩化したけど、なんだか子供がおもちゃ遊びしているみたいな自分が悔しくって、アレからホテルの使わなかったゴムをこっそり持ち帰り、家に帰って魚肉ソーセージ使って練習したんだよなぁ。今から思うと阿呆だけど、あの時はマジだった。こう見えてあたしは意地っ張りだ。出来ない事が有る自分って許せない。
 挙げ句にそのソーセージは
「大丈夫♪ パッケージ取りゃ大丈夫。」
なんて、皮剥いて野菜と一緒に炒めて食べたんだっけ。
 それが今じゃ、どうだろう。中から取り出して
「ふうっ。」
って息吹きかけて裏表確かめて。よく見えてもいないのに、先端摘んで一発だ。ずるって下にしごく様に引っ張って、それからはストッキング付けるみたいに優しくね。傷つけない様に、全体が均一に伸びる様に。空気が入ると上手くいかないから、びくびくって怒張している彼をやんわり押さえつけ、フィットする様に、くるくるくるって。
「・・・・。」
出来たよって私は笑った。
 彼の手があたしの頭を包んで髪を絡ませ引き寄せる。
「んんっ。」
唇が優しく合わさる甘いキス。おいでって、誘われていて。あたしは彼の胸に手を置いて、彼を押し倒し見下ろした。勝利が上目づかいで見上げてて。とっても冷静そうだけど、ほんの少し荒い息が彼も興奮しているんだってあたしに教えてくれていた。
「あたしって、尽くすタイプよね。」
本気でそう思う。ヤリ友の彼にここまで本気になるなんて。馬鹿だぁ。




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テーマ:自作恋愛連載小説 - ジャンル:小説・文学

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